指導変革の軌跡 山形県立酒田東高校「低学年指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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宿泊研修は教師の本気を伝える場

 04年度の1年生が、まず最初に取り組んだのは、2泊3日の宿泊研修だった。「3年次で追い込みがきかないのは、1・2年次の蓄積が少なすぎるから」(石川先生)。そのための布石を、入学式翌日から始まる宿泊研修の段階から打とうというのである。
  研修には、国数英の学習方法講座や自学など、高校での学びを体験させる取り組みの他、礼儀指導の励行による生活指導、酒田東高校OBによる進路講演会などの進路行事、縄跳び大会や校歌・応援歌練習などの集団活動といった、高校生活で必要とされるあらゆる取り組みを凝縮して盛り込んだ。これほど密度の濃い研修を生徒に課したのは、学習習慣の定着や生活態度の改善もさることながら、「『我々教師は本気なんだ』というメッセージを生徒に伝えるためでもあった」と石川先生は語る。
  「かなり欲張った計画になりましたが、それもこれも、『高校生活のあらゆる面で、我々はこのように指導していきますよ』ということを、生徒に伝えたかったからです。そのために、ノートや糊、はさみなど、学習に必要な備品を生徒全員分揃えることもしました。『そこまでしなくても』という先生もいましたが、学年の方針を徹底させるためには必要だったと思っています」
  教師たちの決意表明は、生徒たちにも届いたようだ。合宿最終日の朝、教師たちがロビーに入ると、生徒たちがまとめたバッグが整然と並べられていた。もちろん、教師の誰かが指示を出したわけではない。生徒たちが自分たちの意思で並べたのだ。酒東は変わりつつある――。合宿に参加したすべての教師が感じた瞬間だった。
  更に宿泊研修は、生徒に対する決意表明にとどまらず、教師間の意思疎通を図る効果もあったようだ。石川先生と共に学校視察の段階から取り組みを主導してきた2学年進路担当の佐藤敏先生は、次のように述べる。
  「04年度1学年の担任団の中には、本校に赴任したばかりの先生や、初めて担任を受け持つ先生もいたので、宿泊研修までは、必ずしも教師間の意思疎通は十分ではありませんでした。しかし研修中に、生徒の自習時間を見計らっては次の取り組みについて話し合ったり、生徒の就寝後、夜中の2時、3時まで一日の反省会を開いたりする中で、取り組みの執行役である我々の意思を、学年団の先生方とも共有できたのは大きかったですね。それが、その後の取り組みをスムーズに進めることにもつながったのだと思います」

▼図1
図1

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▲ 宿泊研修では、高校生活のすべてを網羅した。時間の遵守、挨拶の励行、取り組みへの意欲的な参加など生徒の真摯な姿勢が垣間見られた。

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