ナレッジの継承 部活動顧問の進路面談
山内祐司

▲奈良県立五條高校

山内 祐司

Yamauchi Yuji

教職歴18年目。同校に赴任して3年目。吹奏楽部顧問。生徒指導部。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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ナレッジの継承(10)

部活動顧問の進路面談

部活動顧問として指導に当たる教師なら「生徒には全力で部活に打ち込んでほしい」と願うのはごく当たり前のことだ。しかし、部活動ばかりに力を入れて、勉強を全然省みない生徒が増えるとなると、事は本末転倒だ。奈良県立五條高校で吹奏楽部を率いる山内祐司先生は、この課題の克服に向けて、顧問ならではの方法で取り組んでいる。

きっかけは保護者からの相談

 「そうか、進学したいんか。ほな、部活ばっかりやっとったらあかんで。まずは夏休みの宿題を完璧に仕上げろ!」 
  「英語の成績これではあかん。部活が午前中休みのときぐらい、補習に出ろ!」
  8月も中盤になると、五條高校の職員室では山内先生の周りで、生徒とのこんなやり取りが聞かれるようになる。一見、クラス担任が面談をしているかのようだが、実はこのやり取り、「吹奏楽部顧問」である山内先生が、部員一人ひとりを呼んで行っている「進路面談」の一コマなのだ。取り組みのきっかけは、ある保護者の一言だった。
  「実は以前『ウチの子、部活ばっかりで勉強しないんです』と、部員の保護者から相談を受けたことがあったんです。私自身は生徒にしっかり将来を見据えて勉強にも力を入れてほしいと思っていたんですが、改めて考えてみると、部活の時間には部活の話ばかりで、勉強の話はあまりしたことがなかったんですよね。そこで、『部活の顧問が勉強せえと言ったら、部活一辺倒の生徒も言うことを聞くんやないやろか』と思って始めたのが、進路面談だったというわけです」
  こうした経緯で始まっただけに、面談の話題は定期考査の成績はもちろん、卒業後の進路といった突っ込んだ話にも当然及ぶ。
  「ただ『勉強せえ』と言っても生徒には響きません。それよりは、部活で培った信頼関係を生かして、『一緒に今後の高校生活について考えてみないか』というスタンスで臨むことを大切にしています。部活の話しかしないと思っていた顧問から、いきなりそんな話をされて面食らう生徒もいるみたいですが、『学校は何を置いても学びの場なんだ』という意識をまずは持たせるんです」


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