面談は「3年生が引退し、より本気で部活に取り組み始める時期」に当たる2年次の夏休みに始まる。「部活でのやる気の高まりを学習への動機づけに振り分ける」ためだ。それ以降は特に厳密な予定はないものの、定期テストや学校行事の終了直後などを利用し、ほぼ2か月に1回ほどのペースで部活動引退まで継続的に面談を実施する。かなり短いサイクルだが、そこには次のような狙いがあるそうだ。
「近頃の生徒は、どうも『今は部活と勉強の両立は無理。勉強は引退してからやればいい』と、最初から部活と学習の両立を諦めてしまう傾向が強いんです。だからこそ、『生活パターンを工夫すれば、まだ勉強時間が取れるやろ』『補習には出られなくても、プリントをもらってきて自習しとけば大丈夫や』といった具合に、こまめにコミュニケーションを取ってあげたいんです」
更に、面談1回ごとに、生徒に「今できること」「今できないこと」を明確にさせた上で、次の面談までの目標を語らせるのも、ポイントの一つだ。
「部活をしている生徒は、時間がないという悩みを抱えています。だからこそ生徒には、『今できること』と『今できないこと』を明確にさせています。例えば『今、数学に時間をかけなければならないのに時間がない』と認識させれば、『少しの時間を活用して英単語の暗記を先に済ませる』『授業を真剣に受ける』といった『今できること』を自発的に探し出すことができます。更に、少し助言を与えれば『出られない補習のプリントをもらって、先生に質問しながらやる』など、『今できること』の積み上げも図れます。面談1回ごとにこうした作業を繰り返して目標を立てさせることで、生徒の自己管理力を伸ばしたいんです」
とは言え、あくまでもそこは部員と顧問の信頼関係がベースの取り組み。「次の面談までに○○をやってきます」と生徒が言っても、言質を取るようなことはしない。「よし分かった。先生も応援するから、あとは頑張れ!」という具合に、約束は口頭でのみ交わすのが山内先生の流儀だ。
「『勉強をさせる』ということも、もちろん大切なのですが、この取り組みの最終的な目的はそこではありません。あくまでも、一日一日を大切にし、自分の力をきちんと発揮することについて、生徒に考えてほしいだけなんですよ。逆に、この点をしっかりと考えてくれさえすれば、あとは結果的に、学習にも、部活にも打ち込む姿勢が確立できてくると思うんです」
勉強に向かわない生徒に対し、部活動顧問として何ができるのか――。その点を追求した山内先生の取り組みの原点には、一人ひとりの生徒の成長を願う、教師としての真摯な思いがあるのだ。
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