―全国各地で高大が本音で語り合おうという機運が高まっています。05年度から三重県では、高校側からの申し入れをきっかけに、「高大連携懇談会」がスタートしましたが、その背景にあった課題認識は何ですか。
山田 大学側が持っていたのは、地域の人材輩出力を維持していくために、地元の教育機関が一層連携を密にしていく必要があるという認識でした。三重県の中核的な高等教育機関を自負する本学ですが、地元の三重県出身の学生の占有率は40%台です。「将来は地元で活躍したい」と思っているにもかかわらず、県外の大学に進学してしまう学生が決して少なくないんですね。地元の高校と意見交換をしながら、互いに何ができるのかを本気で考えたいと思いました。
鈴木 高校側も同じ問題意識を持っています。「地元で活躍したい」と思っている生徒を地元の教育機関が育てられないことには明らかに問題があります。しかし正直なところ、今までの三重大に対しては、自信を持って生徒を送り出しにくい状況がありました。アドミッション・ポリシーや学部におけるキャリア教育の流れが今ひとつ不明瞭なため、たとえポテンシャルの高い生徒が「三重大に行きたい」と相談に来ても、ともすればよりランクの高い大学を勧めてしまうような面があったと思います。「三重大はきちんと学生を育ててくれるのか?」という点は、進路指導に携わる教師なら誰でも本当のところを知りたいですよね。
山田 人材育成をどのように学部教育の中で図っていくのか…。そのプロセスが高校に不明瞭にしか伝わっていないことは、我々自身も課題として捉えています。しかしその一方で、数学や理科の学力低下、学生の学問・研究に対する能動性の低下など、高校側の協力なくしては解決できない問題もあります。高校側の声を聞くと同時に、我々も伝えるべきことはきちんと伝えていかねばならないという意識がありました。
鈴木 今までは、そうした双方の問題意識がすれ違ったまま「大学が悪い」「高校が悪い」で終わっていた観があります。しかし、それでは問題の解決はあり得ません。一度本音で話し合って、互いに歩み寄れるところは歩み寄るという姿勢に切り替えるのが今回の連携のもう一つの目的です。
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