―話し合いの中では、入試問題についても議論されたのですか。
山田 高校側からは、「アドミッション・ポリシーをより反映した入試にしてほしい」と要望されました。私自身、入試の在り方も検討しなければなりませんが、入試問題についても単に難しければよいという考え方では今後は立ち行かないと思っています。むしろ、基礎学力や、目的意識・意欲をきちんと計測できる問題であれば、難易度にそれほどこだわる必要はないのではないかと思います。
鈴木 問題は平易でも、大学が求めている人材要件や能力が明確に読み取れるような入試問題が高校側としては望ましいですよね。しかしながら、今の三重大の問題からはアドミッション・ポリシーが見えにくいんです。例えば、私の担当教科の国語の問題などを見ても、三重大が掲げる「コミュニケーション能力」というポリシーを、どの問題で測っているのか今ひとつ分かりません。
山田 我々も良い問題が作問できるよう努力していきたいと思います。そのためには高校側から、どんな問題が良問なのかを大学側に積極的に情報発信していただきたいと思います。そうしたやり取りを踏まえた上で、大学が良質な入試問題を作問することができれば、高校生の能力を適切に評価することのみならず、高大双方のカリキュラムを改善していくことにもつながってきます。入試問題を徹底して考えることは、大学教育段階で必要とされる学力要件、言い換えれば小・中・高を通して身に付けてほしい学力を明示することにもなろうかと思います。
鈴木 小・中・高で求められる基礎学力とは、別の言葉で言い換えると「大学や社会で花開く」能力だと思います。大学側がきちんとした作問をしてその基準を明確に示せば、高校の授業の内容やカリキュラムも徐々に変わってくると思います。先の「コミュニケーション能力」というポイントについても、大学で求める学力要件が明確になれば、例えば、高校では抽象的な思考力→そのためには中学校ではきちんと順を追って考える能力→小学校では基礎的な語彙力…という具合に、各教育段階で求められる能力が明確になってくるでしょう。個人に軸足を置いた教育の連続性を確保するためには必要な観点ですよね。
山田 そのためには、三重大のアドミッション・ポリシーを今以上に明確に伝えなければなりませんね。
鈴木 同様のことは「総合的な学習の時間」などについても言えると思います。キャリア教育という視点で見ると、現在は小・中・高で内容がダブっていたり、全く関連性なく取り組んでいたりと、相互のつながりは調整されていません。教育の連続性を本当に考えるならば、小・中・高それぞれの段階で身に付ける力を明確に示した上で取り組む必要があると思います。我々現場の人間のみならず、文部行政にも、生徒の人生を見据えた上での連続性という発想を持ってほしいですね。
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