特集 つながる高大の「学び」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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入試改革と授業改善への意識喚起が鍵

――話し合いを通して、高大で共通の「学力観」が見えてきたようですね。しかし、せっかく授業が変わっても、肝心の大学入試が旧態依然としたまま、というのでは高校側が困ります。その点についてはどうお考えですか?

杉原 例えば本学では「ゼミナール選考」というAO入試を実施しています(図参照)。大学で少人数授業を計2回実施した上で、更に面接やレポート、プレゼンテーションなども含めて学生の能力・適性を見る、かなり丁寧な入試です。これなどは今お話しに出てきた「大学が求める学力」を明確に意識した入試だと思います。しかし、本学の入学定員全体の中ではまだ少数ですから、高校に対するメッセージとしての効果はあっても、実際には多くの学生は通常の学科試験で入学してきます。その点では、一層の工夫改善の必要があると思います。

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小路口 そうですね。実際問題として、高校側の進路指導でも、ある時期から「AO志向の生徒」…つまり、その大学に入学することに強い希望を持つ生徒には、小論文等の個別指導で対応するのが現状です。ただし、最近は一般入試の問題を見ていても、「既にある学力」よりも、「潜在的な学力」を問おうとしている問題が増えてきているように思います。こうした動きが、もっと明確に伝わってくれば、高校側も自信を持って授業を変えていけると思うのです。

杉原 それと、私がもう一つ課題だと思うのは、小路口先生のように、積極的に授業を変えていこうとする高校側の動きを、もっと広域的に展開していかねばならないということです。特定の大学と特定の高校…というレベルを超えて、「高校全体」という視点が必要です。

小路口 ただ、そのためには、先ほどお話ししたように、「従来型の指導ではダメだ」というメッセージを、大学側からもっと明確に出してほしいんですよね。私は今年から、エキスパート教員()として何をすべきか、本校の水野善親校長のアドバイスもあり「国語教育を考える会」という組織を立ち上げて、高校の先生たちと授業改善について話し合っています。最初は戸惑い気味の先生も、大学の先生が来て「授業を変えなければダメだ」と話されると、目の色が違ってきます。生徒の送り先の声というのは、やはり影響力がありますよ。大学の先生の力を借りることで、高校の授業の質が高まる…そういう実感が得られる高大連携ならば、多くの高校教師がメリットを感じるでしょう。

杉原 入試という限られた接点だけでなく、我々も高校側といろいろな接点を設ける努力をしなければいけませんね。高校側でも、先生方がどんどん横のつながりを深めていくことを期待します。

小路口 同感です。今回の広島大との連携では、最終的に高校の授業の評価規準を、高大で話し合って設定するところまでいきました。こうした流れを止めてはならないとの思いから、03年度以降も授業改善のアドバイスを受け続けていますが、もっと広く高大連携を展開して、高校教育の到達規準を明確にしていけたらと思います。

杉原 それは是非期待しています。意識の高い先生方の指導を受けた学生が、どんどん入学してくれると嬉しいですね。

※エキスパート教員……授業力に秀でた教員を認証し、学校の活性化、他の教員の授業力の向上につなげようとする広島県教委の取り組み。04年度にスター トした事業で、05年度現在合計20名の教員が認証されている。
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