近年、学生の資格志向の高まりによって、医学系や薬学系、保健・福祉系などの資格取得系学部の人気が高い。特に看護系学部・学科は、慢性的な看護師不足を背景として、短大から4年制大への改組や新増設が相次いでいる。05年度だけでも、短大を廃止し4年制大とした4大学(秋田看護福祉大、群馬県立県民健康科学大、群馬パース大、東京医療保健大)、学部を新設・改組した4大学(弘前学院大、横浜市立大、帝京大、京都橘大)などが設置認可された。
看護系学部・学科の増加を背景として、志願者数も年々増え続けている。図Aは、全国模試の動向から判明した看護系学部・学科志望者数の年次推移を示したものだが、98年には国公私立大合わせて約3万人だった志望者数は、その後増加の一途をたどり、05年には6万人近くにまで達している。
資格系学部の花形として、高い人気を誇る看護系学部・学科だが、志願者数の増加に伴って、新たな問題も見られるようになってきた。一つは、看護師の仕事の内容や大学での教学内容を知らない学生や、自らの適性を考えずに入学を希望する学生が目立つようになってきたことだ。千葉大看護学部長の石垣和子教授は、次のように指摘する。
「例年、看護についてよく知らないまま入学してくる学生が少なくありません。そのため入学後、自分は医師に向いている、薬剤師になりたいなどの理由で、転学部を希望する学生が一定数はいるんです」
また、看護師の受験資格を取得するためには、臨地での実習と多くの学習が必要である。学生は、特に実習のある時期には自由時間を持ちにくいという悩みを抱えながら学生生活を送っている。入学前からあらかじめ、どの程度の学習・実習を行わなければならないのかを理解し、そのための心構えを進学段階から持っておくことも、入学後一貫してモチベーションを持続させられるかどうかを左右する。
以下、ミスマッチに悩む学生に、大学がいかに対応しているのか、学習負荷をどのように解消しているのか、千葉大の事例を中心に見ていきたい。
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