「授業態度に落ち着きがない」
「授業に対する理解度が落ちている」
「基礎知識が乏しい」
「基礎学力が低すぎるのではないか」
「中学校ではあんなに熱心に指導しているのになぜなんだろう……」
愛知県立豊田南高校の教師たちが、生徒の変化を感じ始めたのは02年の頃。折しも、中学校で新課程が始まり、生徒の学力低下や気質変化が取り沙汰され始めたときだった。
だが、何よりも豊田南高校の教師を悩ませたのは、「新入生の調査書の評定が、実際の学力に見合っていない」ということだった。04年度から、愛知県では高校入試の調査書に絶対評価が導入されることになった。ところが、その調査書の評定と、高校側がイメージしている生徒の学力の格差が、あまりにも大きかったのだ。熱心な指導で定評のある近隣中学校では、いったいどんな授業や指導をしているのだろうか――。生徒の変化に対する教師たちの漠然とした疑問は、中学校における指導へと向けられていった。
「生徒の変化が進むに連れ、中学校の指導の実態を知らなければならないという意識を、本校の多くの教師が持つようになっていました。その決定打になったのが、中学校での絶対評価の導入です。中学校がどのように生徒を指導し、どのように評価しているのか。加えて、入試を公平に実施するという点でも、絶対評価を具体的に知る必要がありました。これが、中学校との連携を見直すきっかけになったのです」
朴井孝生校長は、中高連携の重要性に目を向けた理由をこのように語る。元々豊田南高校では、「開かれた学校づくり」の一環として、年3回の中学校訪問をはじめ、中学校の教師や保護者、地域住民を対象とした地域公開授業、一日体験入学などの取り組みを行っていた。しかし、これだけでは実物大の中学校の姿は見えなかったという。
「従来行われていた中高連携の取り組みは、主任クラスの教師が中心となって動いているにすぎませんでした。第一線で指導に当たる担任の先生方は、主任が作成した資料に目を通したり、報告を聞いたりするだけで、必ずしも中学校の生の姿は把握していなかったんです。本校の教師は常に生徒を伸ばすことを考えています。その熱意を空回りさせないためにも、従来よりも一歩踏み込んだ中高連携を行い、中学校の実態を把握した上で指導を行うことが大切だと考えました」(朴井校長)
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