ただ、同じ総合福祉科であっても、生活福祉コースは若干事情が異なるようだ。というのも、生活福祉コースでも資格は取れるが、コースの目的はあくまで「福祉や生活の基礎を学ぶ」こと。介護福祉コースのように、必ずしも資格を取ることが目的ではないからだ。
総合福祉科生活福祉コース主任の片岡恭子先生は次のように述べる。
「生活福祉コースは本校の中でも、学力的に課題のある生徒も多く、不登校など中学時代に生活面で問題を抱えていた生徒も入ってきます。それだけに、生徒のモチベーションの喚起・維持には一層気を遣います」
実際、05年度に生活福祉コースに入学した47名の生徒のうち、3分の1が中学校時代に不登校経験を持っているという。そのため、生活福祉コースでは、47名を2クラスに分け、教師の目が行き届きやすくすると共に、生徒同士がお互いを理解しやすい環境づくりを行った。
「不登校の解消には、生徒同士が分かり合うということが大切です。対人関係は苦手だけれども、パソコンは得意だという生徒は、苦手な生徒に教えてあげる。そんな経験が、『自分も人の役に立つことができる』という自信につながって、学校の活動にも積極的に参加できるようになるんです」と片岡先生は述べる。時には、「○○さんはパソコンが得意だから、質問するといいですよ」という風に、教師が他の生徒に水を向けることもある。休み時間などに他の生徒が、その生徒に質問に行くようになればしめたものだ。
こうした指導で、不登校経験者の多くが、ベル学園高校入学後はほとんど休まず登校するようになるという。例えば、中学3年間で欠席日数が441日だったある生徒は、05年度前期を終わった段階で欠席が1日、欠席日数391日だった別の生徒は2日。生徒同士がお互いを認め合う雰囲気をつくることが、不登校を未然に防ぐ効果をもたらしているのである。
各科・コースの特性に応じて、生徒のモチベーションを引き出し続けるベル学園高校。近年は各科・コースの横のつながりを強化し、学校全体の総合力を高める改革に着手している。
「本校では各科・コースが、それぞれの個性を生かして独自の歴史を歩んできました。しかし、これからは生徒・教師が共に相互交流を深めることが大切です。他の科・コースの取り組みを参考に自コースの改革に役立てる、あるいは異なる資格や職業を目指す生徒同士が励まし合い、刺激し合ってお互いを高めていく。こうした改革が各科・コースの取り組みに相乗効果を与え、学校全体が活性化していく原動力になるのだと思います」(平山校長)
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