指導変革の軌跡 岡山県 ベル学園高校「学習動機づけ」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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実習で職業への意欲を高める介護福祉コース

 一方、資格や職業に対する知識が少ないまま入学してくる生徒への対応も課題の一つだ。総合福祉科介護福祉コース主任の大石博之先生によると「『資格が取りたい』『高校卒業後すぐに働きたい』という理由が先行し、『卒業すれば資格を取れる』という風に軽い考えで入学してくる生徒も多い」という。
  そんな生徒たちに介護の本当の意味とは何か、資格取得の重要性とは何かを知らしめる役割を果たしているのが、2・3年次に各10日間ずつ行われる介護実習だ。中でも、2年次の実習は介護現場で働く意義ややりがい、難しさを知る絶好の機会だ。
  「実習先にお願いしているのは、ともかく施設で働いている方の姿を生徒に見せてくださいということです。資格取得はゴールではなく、介護現場で仕事をしていくための手段でしかないと、我々は考えています。資格を取得した後も学び続けなければならない。まずは、実際にヘルパーさんが働く姿を見せることで、介助の仕事はどんなものか、お年寄りや体の不自由な方はどのような気持ちで介助を受けているのか、といったことを実感させ、資格取得に対する甘さを改めさせるのが狙いなんです」(大石先生)
  実習を通して、「中学時代にボランティアをやって楽しかった」といった程度の動機で福祉を目指していた生徒も「大変な仕事だけど、もっと勉強して資格を取ろう」と、新たな気持ちで座学に取り組むようになる。また、「リハビリに行きたい」「看護も学びたい」と新たな夢を膨らませる生徒もいるという。
  このように、実習を通して学習や資格取得に対する意欲を高めさせる同コースだが、教師の思いは別なところにもある。
  「いくら高校で介護福祉士やホームヘルパーの資格を取得できると言っても、18年程度の人生経験で、お年寄りや体の不自由な方々に対して十分な介護をするのは難しいですよね。現在、本コースの生徒の約3分の2は就職希望ですが、できるだけ多くの生徒が更に短大や大学を目指し、より高度な知識・技能を身に付けようとする意欲を持ってもらいたいんです」(大石先生)
  目的は資格や学歴にあるのではない。学び続ける意欲こそが介護者にとって必要なのだということを学び取ってほしい。そんな思いが、同コースの取り組みには込められている。


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