大阪府立夕陽丘高校の山下尚紀先生が、進路指導に「メルマガ」を活用し始めたのは04年9月のこと。メルマガとは「メールマガジン」の略で、電子メールを利用して発行される雑誌のことである。受験に向けて頑張っている生徒たちに対して、入試や教科のアドバイス以外に進路指導部長として、何かできることはないだろうか――。山下先生がこう考えたとき、ふっと頭に思い浮かんだのが生徒の会話だった。家庭学習の孤独を紛らわせ、励まし合うために、生徒たちは友達同士、目覚まし代わりに電話をかけたり、携帯電話のメール機能を使って受験日前日に激励の言葉を送ったりしているという。それなら、勉強に疲れて眠たくなる夜の11時頃に、目覚ましを兼ねて激励のメールを送ってあげよう――。そうして生まれたのが「進路メルマガ」だった。
「最近の生徒は堪え性がなく、意志の弱い者が多いんです。最初は高い意欲に燃えていても、周りの友達が推薦で合格し始めると、だんだん萎えてくることはよくあります。どんな状況になっても初志貫徹させて、志望大に挑戦させる勇気を与えるのが『進路メルマガ』の目的なんです」
もっとも、携帯電話というと、授業中に友達とメールをしたり、Webページを閲覧したりする生徒に手を焼いている学校も多い。携帯電話を使った指導という点で心配はなかったのだろうか。
「他校同様、本校でも授業中の携帯電話使用はもちろん厳禁です。ただ、家庭との連絡に使っている生徒も多く、所持率が100%に近いという現状である以上、今更、所持を禁止するわけにもいきません。それなら、逆にそれを利用しようという意図もあったんです」
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