「進路メルマガ」は週に約2回発行、夜の11時頃にあらかじめ配信を希望した生徒のみに送る。内容は入試や模試の話題の他、眠気覚ましの方法や集中力の高め方など、深夜の勉強を効率よくするためのノウハウまで様々だ。文字数は生徒の勉強の邪魔にならないよう配慮して300~400字程度としている。最大のポイントは、時期に応じた内容を心掛けている点だ。模試や定期考査の前に励ましの言葉をかけたり、出願の時期に心構えを説いたりすることはもちろんだが、もっと生徒の心理に深く踏み込んだ声かけがなされる。
「精神的に落ち込んでいる時期、スランプに陥る時期など、生徒が弱気になる時期というのは大抵決まっています。そんな時期を見計らって、励ましの言葉をかけることで、諦めかけた生徒の心を、奮い立たせることができるんです」
例えば、10月はスランプの時期。夏休みに頑張って勉強したにもかかわらず、休み明けの模試で成績が伸びないということは多い。そういうときは、「模擬試験は受験というマラソンの途中経過を示しているにすぎません。後ろの集団にいてもまだまだ頑張れる!」とエールを送る。
11月下旬は、推薦合格者がちらほら出始め、国公立大や私立大の一般入試を目指す生徒にとっては、心が揺れるときだ。この時期はあえて、「これからクラスによっては受験が終わった人が増えてくると思います。でも、そんな中でも歯を食いしばって頑張っている受験生もいるってことを忘れないでね」と、推薦合格者に向けたメッセージを送る。山下先生は「『進路メルマガ』の読者には推薦合格者もいますが、その生徒たちにも、最後までメルマガは送り続けました。今も受験で苦しんでいる友達がいるということを分かってもらいたいんです」と言う。そして、最後の山はセンター試験直前。実力のある生徒に限って、今までならスラスラ解けた問題が、緊張やプレッシャーのために急に解けなくなることがある。そういう時期には「毎年そんな話を聞きます」と、先輩たちも同じだったということを強調して安心させるのだ。
「トップレベルの学校なら補習や課題など正攻法のやり方で結果を出せるでしょうが、本校の場合は、情に訴える方が生徒のやる気が高まると思います」
開始当初、20名前後だった配信希望者は口コミにより次第に増え、11月後半には30名を超えるまでになっていた。配信号数も04年9月末からコンスタントに作成され、05年3月に46号を数えた。
「担任ならばクラス通信とのリンクや保護者版をつくるなど、様々な可能性が考えられます。個人情報の取り扱いには留意が必要ですが、他の先生や学校でも、携帯電話を使った指導の可能性を考えられるのではないでしょうか」
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