VIEW'S REPORT 総合学科の現状と今後
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 2/12 前ページ  次ページ

総合学科特有の課題も少なくない

 しかし、総合学科のメリットをうまく生かしていくためには、いくつかの課題をクリアしなければならないのも事実だ。図2に示したのは高校のタイプ別に教師が「進路指導上困っていること」を数値化したものだが、総合学科の教師が他のタイプの学校に比べて、悩みの度合いが深刻であることが分かる。課題は多岐に渡るが、現場の声を総合すると、次の4点が指摘できるだろう。

▼図2
図2
(/berd/center/open/report/sinroisiki/2004/index.html)
1 カリキュラム作成の課題

 生徒の希望に応じた教科・科目をすべて用意するのが、総合学科の理念である。しかし、現実にすべての生徒の希望をかなえるのは難しく、実際には「コース制」のような形で、緩やかな科目履修の縛りを設けている学校が少なくないようだ。理念と現実の狭間で苦慮している学校は少なくないのである。限られたパワーの中で、いかに豊富なメニューを用意することができるかが課題の一つだ。

2 基礎学力の育成をどのように図るか

 生徒の学力が多様なため、習熟度別授業等を実施しても、完全には生徒のニーズに応えるのは難しいとの声もある。実際、年度途中で就職志望から進学志望に希望進路が変わる生徒がいることなどを考えると、一定レベルの基礎学力は、どの生徒についても保証していく必要がある。
  全体的な学力の底上げをどのように図るかは、総合学科共通の課題となっている。授業法の改善の面でもかなりの工夫が要求されているのだ。

3 進路指導をどのように行うか

 柔軟な科目履修が可能な点は、総合学科の一番の魅力である。だが、それは裏を返せば、「生徒側に明確な進路意識があって初めて機能するシステム」と言える。卒業後の進路が曖昧なままでは、どの科目を履修すればよいのか分からないし、逆に、低学年時に安易に履修科目を固めてしまった結果、学年が上がってから進路変更ができなくなるケースも皆無ではない。「総合的な学習の時間」「産業社会と人間」等を活用した進路学習、あるいは、カリキュラム選択に向けたガイダンス機能の拡充などが工夫されている。
  一方、総合学科の実情が、大学や企業、社会に認知されていない点も大きな課題と言えよう。多様な資質を持った人材に対するニーズが高いにもかかわらず、企業や大学が、その実態をきちんと認識していないケースは未だ少なくない。生徒の資質を十分に生かせるように、教育機関、企業等との連携が必要とされている。

4 生徒と教師の人間関係

 クラス単位で授業を受ける、という状況が総合学科には原則的に存在しない。そのため、ともすると生徒と教師の人間関係が希薄になりがちとの指摘もある。しかし、カリキュラムの決定や進路選択などに際し、「総合学科だからこそ」教師のサポートが必要な側面は決して少なくはない。
  教師間の連携を強化することが課題解決の鍵であるが、状況によっては、なかなか対応が難しいようだ。後出の福岡魁誠高校では2人担任制を導入しているが、今後はこうしたケースも増えていくかも知れない。

  以上、4点の課題を挙げてみたが、これらの課題が解決されたとき、総合学科は本来の魅力ある教育を実現できるはずだ。山梨県立甲府城西高校、福岡県立福岡魁誠高校の事例から、課題解決のヒントを読み解きたい。


  PAGE 2/12 前ページ 次ページ