特集 「完全新課程生」をどう育てるか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「達成体験」の不足を補う指導を実践

 こうした変化が顕在化する中、藤枝東高校では05年度の夏休み明けから、指導の見直しがスタートしている。1学年主任の藤原士郎先生は、「ポイントは、達成体験・努力体験を積む機会をできるだけ取り入れることにあった」と説明する。
  「生徒に中学時代の状況を聞いてみると、どうも多くの生徒が『本気で頑張った結果、何かを達成した』という経験をきちんと積んでいないようだったのです。本校の生徒の場合、中学校の授業の負荷が軽すぎるのか、中学時代はそれほど頑張らなくても授業についていけてしまうんですね。高校に入ってから『頑張り方が分からない』『すぐ諦めてしまう』という状況が生じている原因は、そこにあると考えました。そこで、2学期からは、授業やLHRの中で『頑張った結果、何かが得られた』という体験をできるだけ積ませることを重視しました。言葉は悪いですが『根性を入れて頑張る』体験をさせたいと考えたのです」
  例えば、森先生の英語の授業では、それまで「やっておしまい」だった毎時間の単語テストに、合格・不合格の区別をつけることにした。また、単元ごとのまとめテストも、合格点に達するまで追試を受けることを義務付けた。
  「特に、語彙やイディオムのように、反復練習して暗記した結果身に付く知識については、理屈で説明して分かるようなものではないですよね。『とにかく覚えるまでやる』という体験を積んでほしかったんです。1学期は『何で単語を暗記する必要があるのか分からない』などと言っていた生徒たちですが、2学期になって、ようやく『暗記がうまくできない』といった相談に来るようになりました。自ら進んで学習しないとダメだということが、ようやく体感的に理解できたのだと思います」
  同様の発想は数学でも取り入れられた。週末課題の量を調整することで、生徒が「やり遂げた実感」を持てるよう工夫したのである。
  「思い切った授業内容の精選をして、生徒が高校生らしい学びのスタイルをきちんと確立し、『やればできる』という体験を積ませることがまずは大切だと考えました。3年次の入試問題演習に入る前までに基本事項を確実に身に付けさせるように教科内で話し合いたいと思います」(高塚先生)
  従来は、4月の合宿が終わった時点で中学生から高校生へと脱皮していた藤枝東高校の生徒たち。05年度は何とか遅れを取り戻したものの、「10月頃までズレ込んだ」(森先生)というのが教師たちの実感だった。


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