今を遡ること3年前。藤枝東高校では既に「新課程生」を想定した各種の指導改革が行われていた。高校生らしい学びの習慣付けを狙った新入生宿泊研修、1年次からの進学特別クラスの設置、土曜補講の拡充、FD(Faculty
Development)的な手法に基づく授業改善、シラバス作成などが、文部科学省の「学力向上フロンティアハイスクール事業」指定を活用しつつ、一挙に実施された。改革は効果を上げ、少なくとも03年度入学生については、何とか例年並みの学力水準を維持することに成功したという(この時期の藤枝東高校の動きについては本誌03年度2月号を参照)。
ところが、04、05年度と年度が進むに連れ、03年度に導入された取り組みが、うまく機能しないシーンが目立つようになってきた。特に05年度入学生については、学力・気質の両面において、これまでとは明らかに異なる「ギャップ」を、多くの教師が感じているという。藤枝東高校の教務主任を務める浅川典善先生は、05年度の状況を次のように語る。
「05年度入学生の第一印象は、『素直な生徒が多いなあ』というものでした。宿泊研修などでも、与えた課題には一生懸命取り組んでいましたし、学習面で手がかかる生徒は少ないのではと感じました。しかしその一方で、自分からいろいろなものに挑戦する能動性や、一定以上の負荷に対する耐性が足りないという声が、5~6月頃から聞かれるようになりました。授業でも従前の指導を踏襲するだけでは、本校の生徒らしい学びの姿勢がうまく育たなかったのです」
1学年で英語を教える森真理先生は03年度入学生との違いについて、次のように説明する。
「『学習定着度が悪い』『基礎事項が未習得』といった、一般的に言われていることについては一応把握したつもりで授業に臨んでいました。しかし、数か月授業を教えてみて、知識的な問題よりも、むしろ学習姿勢の問題が大きいように感じてきました。例えば、授業で板書を写すようなときも、本当にただ写しているだけ。『ここを訳してごらん』と当ててから、初めて写した内容について考え始める生徒が多かったんです。形として学習行動が身に付いていても、主体的に学ぶ姿勢が今ひとつ弱いように感じました」
また、暗記学習に対する意識の薄さも森先生が気付いたポイントの一つだ。
「実際、1学期の間は『単語って暗記しなければならないものなの?』といった感覚の生徒が少なくなかったんです。毎時間の単語テストの出来も、例年に比べると芳しくありませんでした」
数学担当の高塚諭先生が感じたのは、負荷の高い課題を、すぐに諦めてしまう傾向だ。
「数学科では、03年度を機に、1年次の進度を従来よりもやや遅めに設定しました。特に05年度入学生については中学時の積み残しのフォローや、基礎・基本の定着に力を入れようと思ったんです。しかし、こうした配慮をしたにもかかわらず、スタディーサポートのデータを見てみると、『授業についていけない』と感じる生徒の割合が03、04年度入学生に比べて急増していたんです。『易きに流される者が多過ぎる』という感覚を強く持ちました」
下に示した図1は、スタディーサポートの集計結果から、授業に関わるデータの一部を抜粋したものだ。確かに、これまでの生徒と比べると、明らかに授業負荷に対する耐性が低下しているようだ。
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