進路指導主事の吉田憲一先生が2年生全員を対象とした面談を始めたのは04年度のことだ。きっかけは、2年生の中だるみ。学習時間調査の結果を見ると、1年次との比較はもちろん、過年度比較においても減少傾向は歴然としていた。
「進路指導主事としての反省もありましたね。学力検討会とか志望校検討会で生徒の進路について話し合う機会は多いのに、話題の中心は成績や志望大などのデータばかり。生徒の顔が見える進路指導をしなくてはいけないと思いました」
そこで、04年度2年生の1月から、1人15~25分の時間を割り当て、昼休み1名、放課後に3~4名のペースで面談を開始。3年生の7月一杯までに全7クラス279名の生徒との面談を行った。
面談の際、吉田先生が留意したのは、なるべく生徒の本音を聞き出すことだ。そこで考案したのが、次ページに示した「面接カード」。「希望大学」や「将来の希望職業」「希望実現に必要な偏差値」などの記入欄が設けられているが、模試や定期考査の結果など生徒の成績に関わる項目はない。
「かねてより、成績を間に置かない面談をしたいと思っていました。成績を間に置くと生徒は何も言えなくなってしまいますからね。面談中はメモも取らないようにして、学校生活からだけでは分からない生の声を引き出すよう心掛けました」
「面接カード」の中で、先生が最も重視しているのが、固定枠の下側に設けた「学校のある日の生活を表にしてみてください」という項目だ。ここから、学校生活で見せる顔とは別の顔を覗かせる生徒も少なくないという。例えばある女子生徒は、部活動にも所属せず、授業が終わるとまっすぐに家に帰るおとなしい生徒だった。しかし、帰宅後は勉強の合間に楽器演奏に熱中するなど、活発な側面を持っていることが分かったという。
「生徒の表情や話しぶりから、模試成績などの数値からだけでは見えない、生徒の底力を見ることがあります。『入試までには必ず伸びる』という手応えは、生徒と直接話してみて初めて感じるもの。志望校検討会の際に、そうした私の所見を伝えることで、生徒に高い目標を持たせようと頑張っている担任の先生方が、より自信を持って指導に当たれるようになると思います」
また、担当教科である英語に関して、個別レクチャーを行うこともある。「先生のアドバイス通りに勉強したら成績が上がった!」と、顔をほころばせて報告に来る生徒も多いという。「信頼関係の中から生徒に頑張らせて、頑張ったことが成果に結び付く――、そういう好循環をつくり上げることが大切なんです」と吉田先生は強調する。
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