VIEW'S REPORT 小・中学校におけるR-PDCAサイクル 小・中学校は「学力向上」の成果をどう認識しているのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「育成したい力」から指導の方向性を探る

 以上、「かなり成果が上がった」学校と「まあ成果が上がった」学校との違いを、R-PDCAサイクルの段階ごとに見てきた。
  ただ、リサーチの段階でも述べたとおり、一連のサイクルを機能させるためには、その大前提として校内コンセンサスの醸成が欠かせない。生徒にどのような力を付けさせるのかというコンセンサスがあって初めて学校のグランドデザインができ、それに応じてR-PDCAの各段階における取り組みが策定されるからだ。
  最後に、その前提となる「育成したい力」について見ることで、小・中学校と高校における指導の接続について考えてみたい。
  図7は、育てたい力の優先順位第5位までの選択率上位5項目(複数選択)を、学年段階別に見たものだ。最大の特徴は、小学校高学年以外のすべての段階で、「関心・意欲・態度の育成」が第1位を占めており、しかも、小学校よりも中学校の方がその割合が高いことだ。更に、すべての学年で「基礎・基本の定着」が第2位になっていることからも分かるように、中学校においては、まず学習が成立する前提となる関心・意欲・態度を育成し、その上で基礎・基本の習得を図るという指導が定着しているようだ。関心・意欲・態度を高めるための動機づけの手法を、高校で更に工夫していく視点も必要だろう。

図7

  一方、図には表れていないが、「自尊感情や自己肯定感の育成」「自分の能力や適性を伸ばすこと」などの自己成長力を高めることや、「社会性を高めること」など、「生きる力」に関わる資質・能力の育成の優先順位は、小・中学校とも総じて低い。これは、小・中学校において職業体験やキャリア教育などが、高校のように生徒の将来との関わりから体系化できにくいことを表している。
  自己肯定感の育成や社会性の涵養は、教科学力の向上を図るためにも必須の取り組みだ。小・中・高を一貫したキャリア教育の体系化が、今後必要になってくるだろう。


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