編集部 指導力向上のために、ベテラン教師と若手教師の意識のギャップはどう埋めていけばよいのでしょうか。
長岡 意外と重要なのが、「言葉の共有」です。うまくいっている高校には、指導の指針となる「合言葉」が存在しているものです。本校の場合「真のリーダーを育てる」という言葉ですね。共通の目標を持っていれば、議論の対立や見解の違いがあっても、最終的に双方が合意できる解決策が見つけられるのではないでしょうか。
保科 本校が先生方の共通理解を得るための手法として用いているのが、データに基づいた現状分析を客観的に行うということです。本校では模試の結果や家庭学習時間の調査はもちろんのこと、生徒へのアンケート調査を頻繁に実施しています。そして、例えば家庭学習時間と模試の成績と相関関係を示したデータを示すことによって、先生方に「生徒には1日3時間以上の家庭学習を行うように指導してください」といったお願いをするわけです。
今の若手は「とにかくやってくれ」では動きません。しかし根拠を示せば、その取り組みに価値があることを納得してくれます。
花島 生徒の進路希望を実現するために、学力を伸ばすことに異を唱える先生はほとんどいないですよね。生徒指導は生き方に関わることなので、教師の意識を合わせるのは非常に難しい。そこは解決困難な課題です。
ただし、データは確かに効果があります。生徒指導で言えば地域住民からの苦情。「服装が乱れている」という住民の方からの苦情を報告することで、先生方も納得して服装指導に当たってくれるという面はありますね。
保科 システム的な工夫は重要ですが、教師間の溝を埋めるために一番大切なのは、若い先生たちが意欲を持って働ける雰囲気を学校の中につくっていくことですよね。
若い先生たちに体験してほしいのは、受験にせよ部活にせよ、生徒と共に取り組んで最後に高みに登ったときの喜びです。あの喜びが、教師としてのやりがいや自信にもつながっていくのです。ところが、そうしたことに最初から興味を持たない先生が、どうも増えているような気がします。
花島 自分から積極的に動かない指示待ち人間は、確かに教師の中でも目立ってきています。会議では発言せず、言われたことしかしようとしないような先生です。しかし若い先生と一対一で接してみると、さまざまな体験をしており、そして教育の改善についても自分なりにいろいろな意見やアイディアを持っていることに驚かされます。
長岡 ところが良いものを持っている先生でも、組織に入ると黙ってしまうんですよね。もしかしたら、私たちが彼らの力をうまく引き出せていないのかも知れません。
私は若い先生に重要な仕事を、もっと頼むべきではないかと思います。事実、私は昨年同じ学年団の若手の先生に、パソコンによる学力分析の仕事を依頼したのですが、大変な労力にもかかわらず一人でこなしてしまったんですね。その先生は、学年団においてなくてはならない存在に成長しました。
保科 「自分がコレをやったんだ」という達成感と存在意義を感じたとき、仕事のやりがいが見えてくるものですからね。それはベテランでも若手でも変わらない。基本的な指導方針の共有化は必要ですが、「あなた自身の工夫を取り入れてみてください」という姿勢を若い先生に示すことが、我々には求められているのかも知れませんね。
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