新課程導入以後は、算数の考え方が身に付いていない生徒が増えてきている、というのが基礎コース担当の野村先生の実感だ。
「面積の計算はできても、なぜその方法で計算するのかが分からない生徒が少なくありません。小学校の算数の授業時間が減ったことで、一番欠けているのは体験だと思います。ハサミと紙を使って実際に図形を作るような時間が減っているのでしょう。しかし、中学校の教師が『昔はやっていたのに』と嘆いたところで、何も始まりません。新課程で学んできた今の子どもたちに対応した授業展開をすることが、重要だと思います」
基礎コースには数学が嫌いな生徒が多いため、振り子など身の周りの具体物を使って説明することを心掛けている。学力を高めることも大切だが、「数学なんて勉強したくない」という生徒の抵抗感を少しでもなくし、「好きではなくても残さず食べられる」という段階にまで持っていくのが狙いだ。
「中間・期末テストは全員共通の問題を出題しているので、全コースの進度を合わせなければなりません。基礎コースでは、数多くの問題をこなすことよりも、基本問題や興味を持ってほしい問題に絞って授業を展開しています」(野村先生)
一方、発展コースでは、意欲が高く、力のある生徒が多いため、一つの問題をさまざまな角度から深く掘り下げることが可能になった。生徒たちに「友達が気付かないような別の解き方を見つけ出そう」という思いが芽生え、互いに刺激を与え合って意欲が高まっていく場面も見られるそうだ。
また、最も人数が多い標準コースは、生徒の習熟の幅が広い。このため、2人の教師によるチームティーチングの下で、個別の対応を充実させている。
ただ、生徒同士、生徒と教師の関わりの点では見直すべき課題もあるという。
「一斉授業を行い、生徒同士で多種多様な意見を出し合った方がよい場面もあります。今後は、学習分野ごとに一斉授業と習熟度別授業をうまく使い分けられるような授業形態にしたいと考えています」(篠﨑先生)
「効率よく勉強を教えるだけが学校の役割ではないと思います。褒めたり注意したりしながら、数学の授業を通して人を育てたいという思いがあります。しかし、単元ごとにコース編成を変えてしまうと、じっくりと生徒と関わることができない面があります」(野村先生)
習熟度別授業を行うのは数学のみだが、他教科の教師が互いに授業を見て意見を出し合う「垣根のない教科部会」を設けているほか、全教科で毎時間、授業の最後に「学習カード」(図3)で生徒による授業評価を行うなど、一人ひとりの満足感を高める取り組みが盛んだ。「ノーチャイム」など、生徒が主体的に学ぶ姿勢を身に付けるための手法も積極的に取り入れている。
「高校でも同様だと思われますが、受け身の生徒が増えている今、手をかけざるを得ないのが現状です。しかし、ただ授業を習熟度別にすれば解決するということではありません。今後も生徒を伸ばすための有効な授業スタイルを模索し続けたいと思います」(篠﨑先生)
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