葛生中学校では、入学段階で最も学力の差がついている教科が数学だ。小学校時点で既に「算数嫌い」になっている生徒も少なくない。そこで、葛生中学校は6年前から全学年の数学で2クラスを三つに分けた習熟度別授業を取り入れており、現在では「基礎」「標準」「発展」の3コースを設定している。
「以前は各コースをベーシック・アドバンス・エクストラと名付けていました。しかし、言葉のイメージから偏見に近いものを感じさせてしまうという指摘があったのです。能力にかかわらず、自分の学習スタイルに合っていて、自分の力を伸ばせるコースで学ぶことが大切だと考え、各コースを担当教員名にして、指導の特色を明確に打ち出すことにしたのです」(篠?義成先生)
コース替えは年6回、単元ごとに行う。コース選択に際して、教師が助言することもあるが、「自分を的確に判断し、評価できる力を身に付けてもらいたい」との考えから、あくまでも生徒の希望を尊重する。生徒は「できるようになった」「学力をもっと上げたい」「今のコースでは理解が不十分」などと感じたとき、自らコースを移る判断をする。
「学年にもよりますが、生徒は発展コースを避ける傾向にあります。ほかの中学校の先生に話をうかがっても同じような傾向にありました。『勉強、勉強』という姿勢が友達の間で歓迎されない風潮が原因だと思います」(篠﨑先生)
希望制を採用すると、テストの点数で振り分ける場合よりも、それぞれのコースに集まってくる生徒たちの学力には幅ができる。それが授業によい影響を及ぼしていると、野村隆一先生は話す。
「学力だけでコースを分けると、コースの生徒の学力が均質化してしまうので、授業の広がりや高まりが欠けてしまいます。授業の中で『あいつはすごいな』とほかの生徒から刺激を受けるような場面も大切です」
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