中学校の現場から 習熟度授業
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コースの選択は生徒の希望を優先

 では、中学生は習熟度別授業をどのように受け止めているのだろうか。
  習熟度別授業の経験者の6割以上が「勉強がよく分かるようになった」「自分のペースで勉強できる」と、習熟度別授業を肯定的に捉えている(図1)。また、授業内容の理解度が高い中学生ほど「できる子どもには難しい内容を教えてほしい」という傾向が強く、授業内容の理解度が低い中学生は「分からないところを、分かるまでしっかり教えてほしい」という傾向が強いという結果も出ている(図2)。習熟度別授業は、自分に合ったスタイルの授業を受けたいと考えている生徒のニーズに対応していることが分かる。   しかし、一方で「グループを分けるときに子どもの意見を聞いてほしい」「自分の力が友達に分かるので嫌だ」と感じる生徒も多い(図1)。これは、発達段階として、中学生になると自我が芽生え始めるのと無関係ではないだろう。

図1,2

  こうした事情もあり、中学校の習熟度別授業では、テストの点数だけでクラス分けをするケースは少なく、生徒の希望を優先するのが一般的だ。学力を中心にしてクラス分けをする中学校でも、最終的には生徒自身の希望を反映させることが少なくないという。このように、自分の望んだ授業を主体的に選択することを通して、生徒の学ぶ意欲を高めると共に、授業の理解度や満足度も高まるという効果があると言えるだろう。
  習熟度別授業は生徒のニーズに合っていることから、今後も導入する中学校は増えていくと考えられる。ただし、実施する教科、学年、授業スタイルなどは、学校によってさまざまだ。そのため、まずは自校の学区の中学校がどのような形態で習熟度別授業を実施しているのかを把握することが大切だ。
  生徒の出身中学は複数あるため、すべてを把握するのは難しいかも知れない。それでも、入学者が多い中学校だけでも把握した方がよいだろう。その上で、高校入学直後の導入期の授業をどう展開するかを考えることが、中学から高校へのスムーズな接続につなげられるのだ。   次ページからは、中学校での習熟度別授業は具体的にどのようなものか、6年前から習熟度別授業を展開している栃木県佐野市立?生中学校の事例を紹介する。

中学校の習熟度別授業の特徴

自己決定で学習意欲が強まる
授業の選択には自分の意思が反映されるため、学習に前向きに取り組む姿勢が強くなる。
授業の理解度や満足度が高い
自分の学習スタイルに合った授業を受けるため、理解度や満足度が高まる。

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