中学校の現場から 保護者への取り組み

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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保護者の役割や学校の姿勢を明確に提示

 保護者への情報発信は、ITを活用したものだけではない。学年通信や進路通信などさまざまな文書の配付、学校公開などの取り組みも盛んだ。特徴的なのは、毎年4月に全生徒に配付する『小牧中学校の教育』だ(図1)。A5判で46ページに及ぶ冊子は、教育方針や教育内容を詳述しているだけではなく、保護者に求めることにも言及している。生活スタイルや学習習慣の形成、親子のコミュニケーションなど、家庭で取り組んでほしい事項を記載しているのだ。
  「この冊子は保護者に対する、本校の公約といえます。教師は体を張って生徒と向き合っていますから、保護者の方々にも理解していただきたいというメッセージなのです。もちろん、家庭にはそれぞれ事情があり、できることとできないことがあると思います。しかし、保護者として最低限のことはしてほしいというスタンスは譲れませんし、譲ってはいけないという思いがあります。しっかり読んでいただくために、保護者説明会やPTA総会など、事あるごとに冊子の説明をしています」(石川教頭)

図1

  積極的な発信には、教師の生徒への対応について先に説明し、理解を得る面もある。
  「保護者の考え方はいろいろで、教師の指導に苦情が来ることもあります。しかし、苦情を言われてから対応していては、学校側の言い訳にしか捉えられません。保護者に学校の指導方針をあらかじめ伝え、理解を求めておく必要があるのです」(石川教頭)
  最近の保護者は、教師への依存や要望が強くなっているという背景もある。稀なケースだが、「朝、子どもが起きられないから、先生が迎えに来てほしい」「挨拶ができるようにしてほしい」など、本来、家庭が教育すべきことを学校に求める保護者もいる。
  「保護者にただ責任を押し付けるだけでは、今、目の前にいる子どものためになりません。その生徒にどういう指導ができるのかを考え、保護者に任せた方がよい場合には任せます。それが難しければ学校で引き受けなければならないと考えます」(石川教頭)
  学校の情報を積極的に保護者へ発信してきた小牧中学校では、保護者の協力を得やすい環境が整ってきた。以前と比べて精神的に幼い部分のある今の子どもの気質を考えても、情報発信による保護者を巻き込んだ教育が一層重要だと石川教頭は考えている。
  「自立を促す面では、中学と高校では指導法も保護者への対応も異なるでしょう。しかし、子どもたちの現状を踏まえると、今はより積極的な保護者への発信が必要だと思います。『子どもにとっての人間形成の場所』という役割は小学校から大学まで同じです。中学校と高校がお互いに情報を共有しながら取り組んでいきたいと考えています」


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