――金沢泉丘高校は、旧制一中以来の110余年の歴史を持つ、北陸有数の伝統校です。近年は、スーパーサイエンスハイスクールの指定(03年度)、学校経営計画の立案と学校評価の実施、更に生徒や教師が自主的に登校して科学や異文化などについて学ぶ「土曜スクール」の開講など、先進的な取り組みにも挑戦されています。
『学校経営計画書及び学校評価計画書』には、中・長期的目標として「確かな学力を身に付け、心身共に健全で品位と良識あふれる次世代を担うリーダーの育成」が掲げられています。地域の中核校として長きに渡り生徒・保護者の信頼を集めてきた金沢泉丘高校のリーダー育成・生徒育成におけるポイントをうかがいたいと思います。
上田 確かに本校は、難関国立大への進学を希望する生徒が数多く集まる学校ですから、大学進学実績は生徒の進路希望が実現した結果として重要です。しかし、生徒が社会の一員として持てる力を実際に発揮するようになるのは、高校を卒業して10年、20年経ってからのことです。
したがって、生徒育成も、目先の大学進学だけを捉えたものではなく、生徒が社会の第一線に立つそのときを見据えたものでなければなりません。
10年後、20年後に自分の能力、そしてリーダーシップを存分に発揮し、社会を引っ張ることができる人物を育てるために、私たちが生徒指導上重視していることの一つは、さまざまな経験を積ませるということです。この春に一期生が卒業した現行課程の生徒もそうですが、近年、生徒たちにはたくさんの体験の場がカリキュラムの中に用意されています。
しかし私は、体験は自発的なものであって初めて本物になると確信しています。生徒が自らの意思で体験する機会が豊富にあることが、本校の生徒育成の重要な鍵だと言えます。
菱田 本校ならではの自発的な体験の場といえば、毎年9月の学校創立祭で行われる3年生の野外劇です。受験を目前にしたこの時期、生徒は役者として、そして裏方としてみんなで力を合わせて完成させる経験をします。大きな物事を為し遂げるには、いろいろな人の力が必要であることを知ることになります。
本校は、学校5日制に移行したときも、それまでにあった学校行事を減らしていません。ですから、生徒は常に忙しい。でも、その忙しさの中で学ぶことが実は多いと思うのです。同様のことは、国公立大を中心にした進路指導にもいえます。つまり、苦手科目をあきらめさせず、最後まで6教科を頑張らせる指導です。単に国公立大に何人合格したかではなく、嫌なことから安易に逃げず、向き合う体験に価値を見いだしているのです。
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