――「本物の体験を重視する」指導は、まさに近年の生徒の学習環境や気質の変化を踏まえたものだと思います。特に、生徒の気質という面で、お感じになっていること、そして学校として生徒育成の上で配慮されていることを教えてください。
宮越 最近感じるのは、いわゆる「天下国家」を語る生徒が少なくなったということです。リーダーとして日本を変えたい、国を背負っていきたい、そんな大きな夢を語る生徒が少なくなりました。だから、特に入学した当初は、進路志望でも大きな夢を描けず、どこかこぢんまりしています。私たちはまず、自分が次代を担うんだという意識を持つよう、生徒に働きかけていくことにしました。
菱田 ただ、「気概を持ちなさい」「リーダーとしての自覚を持ちなさい」とストレートに言っても今の生徒はついてきませんよね。
宮越 そうなんです。まずは夢を語る雰囲気を、学校の中に醸成していくことが大切です。「世の中にはこんなに面白い学問がある」「大学ではこんなにやりがいのある研究ができる」というメッセージを、大学訪問やOBと語る会、集会や面談など、事あるごとに生徒に伝えます。そうすると、生徒も次第に「将来自分はこんなことがしたい」と夢を積極的に語り始めるように思います。
上田 今の生徒に合った手立ても必要ですよね。一人より友だちと一緒の方が勉強しやすいという生徒が増えているのなら、学校がそういう場を設けることも必要です。
宮越 また、日頃の声かけから、「褒めて伸ばす」ことにも留意しました。「こうしなさい」とか「なぜこんなことができないのか」と叱るのではなく、「頑張っているね」と褒め、「こうすればもっと良くなるよ」と、一つ上のレベルを目指すように促しました。実は、この春の卒業生の保護者から、「元気よく高い目標を目指す人間に育ててくれたことに感謝します」という趣旨のお手紙を頂戴しました。本校の指導をしっかりと見ていてくださったのだなあと感動しました。
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