静岡東高校の進学実績の伸びは、ここ数年著しい。1999年度入試の国公立大合格者は87人。それが年を追うごとに合格者数は増加し、今春卒業生に至っては、卒業生322人に対し149人に達している。
こうした背景を進路指導課長の松山利彦先生は、「本校は学力向上フロンティアハイスクールなどのさまざまな取り組みを立ち上げていますが、中でも面談指導を充実させたことが大きいと思います。面談によって教師と生徒との間の信頼感が高まり、生徒の意欲を引き出すことができましたから」と説明する。
静岡東高校が面談指導に力を入れ始めたのは、01年ごろからだ。実は当初の狙いは進路指導ではなく、生徒の生活面の改善だった。
「私が本校に赴任したのはちょうど99年でした。当時は服装が乱れ茶髪も目立ち、毎朝、クラスに4、5人は遅刻者がいて、落ち着いて学業に専念できる雰囲気ではありませんでした。そこで、生活指導を重視することで、学校の雰囲気を変えることを目指したのです」(松山先生)
生活指導といっても静岡東高校の場合、抜き打ちで生徒全員の服装検査をするといった、よくある一斉指導は取らなかった。たとえ表面的には生徒の服装の乱れや遅刻が改められても、生徒の「気持ち」までを変える指導にはつながらないからだ。静岡東高校が選んだのは、「生活指導と進路指導をセットにした面談指導」で、生徒と粘り強く向き合うこと。やはり99年に静岡東高校に赴任して、生徒指導担当として面談指導に中心的にかかわってきた小関直樹先生は次のように話す。
「身なりを正すことだけが目的の面談では、生徒を本当の意味で変えられないと考えました。そこで、面談を『生き方』指導として捉え直したのです。本校の生徒のほとんどは進学希望者。進路や学習の話を軸にしながら『自分には本来やるべきことがあるのに、こんなところでつまずいていてはいけない』と生徒自身に気付かせるように話しかけました」
もちろん面談は1回では終わらない。生徒の様子が変わるまで、継続的に行われた。生活が乱れている生徒は、家庭や人間関係に問題を抱えていることが多い。ときには彼らの悩みに耳を傾け、どうすれば立ち直れるかを一緒になって考えた。
「学校の中に、徐々に落ち着いて学習に取り組む雰囲気が戻り、それに伴って進学実績も上昇カーブを描くようになりました。今では服装違反や遅刻をする生徒は、極めて少数になっています」(松山先生)
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