小関先生たちは、生活態度に問題のある生徒だけではなく、自分が担任や副担任、教科を担当するクラスの生徒に対しても、面談指導を重視するようになった。「忘れられないのは、2年前に副担任をした3年生のクラスです」と小関先生は話す。
その学年は3年生になるまで学力が伸びず、進学実績の深刻な落ち込みが危ぶまれたという。そこで講じられた対策が、担任と副担任による徹底した個人面談だった。
「担任と副担任がコンビを組めば、担任が正論を述べたあとは、副担任がフォローするというように、一人の生徒に違う角度からアプローチできます。担任か副担任かのどちらかの言葉から、生徒に気付きを得てもらうことを狙いとしました」
森山陸雄先生もこの年、小関先生と同じく3年生の副担任をしていた。森山先生が感じたのは、面談を通じて、教師と生徒との関係だけではなく、教師同士のつながりも深まっていくことだった。
「生徒を深く把握しようとすれば、教科担当や部活の顧問にも話を聞く必要があります。ある生徒をめぐって、日常のちょっとしたことでも情報交換をする場面が、当たり前のように見られるようになりました。
そうすると、今度は自分のクラスだけでなく、ほかのクラスの生徒も気になるようになります。テストの返却時など、さまざまな場面で生徒への細かな声かけを行うようになりました。この時期、学校の中での人間関係が、どんどん密になっていくのを感じていました」
年度当初は危機的と思われたこの学年の学力は大きく伸び、結果的には国公立大合格者数143人と、これまでの進学実績を飛躍的に更新することになった。「面談効果」を多くの先生が実感した出来事だった。
「面談指導を充実させることの一番のメリットは、生徒との信頼関係を築けることです。教師は生徒の適性や進路希望を熟知しています。だから、たとえ生徒がセンター試験で失敗して志望大の変更を余儀なくされたとしても、教師はその生徒に合った別の大学を、自信を持って勧めることができるのです。生徒も『あの先生が勧めてくれるのだから』と納得して受験できる。不本意な思いを引きずらずに個別学力試験の準備に臨めることが、国公立大合格者数に結び付いたのでしょう」(松山先生)
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