―お二人とも学部時代は、今とは違う勉強をしていたそうですね。
佐々木 僕は工学部で材料工学を勉強していました。それが、大学3年生のときに「生化学」の授業を受けて、生命の基本的な機構がどうなっているかを学んだのです。材料は人間によって作られますが、生命の世界は人間が手を出したわけではないのに、とても複雑で、しかも整然としたシステムが成り立っています。高校時代に「生物」を選択していなかった僕は、「こんな世界があるんだ」とショックを受けて、それで大学院では分子生物学を専攻することにしました。
長坂 僕は薬学部出身です。分子生物学を選んだのは、「なぞが多い学問」だから。うちの研究室の研究テーマであるアポトーシスもそうですが、細胞や分子のレベルでは、なぜそういうことが起きているのかうまく説明できないことが、まだまだたくさんあるんです。
佐々木 体の中では、アポトーシスで死んだ細胞をマクロファージが食べるというように、いろいろなドラマが起きています。そのドラマのストーリーと、どんな役者が活躍しているかを探ることができるのが、分子生物学の面白いところですね。
|