指導変革の軌跡 埼玉県川口市立 県陽高校「進路指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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保護者にも本音をぶつけ信頼感を生み出す

 こうしたシステムの構築と共に、教師間での進路指導の方針の共有も進めた。放っておくと、非現実的な夢や安易な進路を選択しかねない生徒に、将来をしっかりと見据えさせるため、進路指導に関する基準を規定し全学年で統一したのである。
  例えば、専門学校では資格が取れる学校だけを勧め、それ以外の学校はパンフレットも置かないようにした。ネイルアートや動物看護、トリマーなど、就職先の少ない職業も勧めない。また、芸能人や漫画家など特殊な技能を要するものは、基本的に再考を促す。教師同士でこうした方針を共有し、判断に迷う場合は、担任と進路指導部で異なるアドバイスにならないよう、連絡を取り合って方針を決めることにした。
  「本人の希望を尊重するのも、進路指導の方法の一つかもしれませんが、社会と向き合い、現実を直視させて、現実的な進路を選択させるのも私たち教師の使命」と嶋津先生は語る。
  しかし、教師がいくら頑張っても、保護者が「フリーターでもいい」と言ったらそれまでだ。そこで、保護者に対しても、県陽高校の方針を徹底して説明した。1年次の進路保護者説明会の案内書には「必ず出席してください」と念を押し、当日参加できなかった保護者に対しては、後日、もう一度説明会を実施した。保護者もこうした高校の熱意を感じ、例年1学年150名中50~60名だった参加者は、05年度には1・2回目合わせて140名以上の参加となった。
  更に、県陽高校は保護者にも本音でぶつかっていった。特に、保護者の理解が必要なのは学費だ。大学進学のため3年間努力したにもかかわらず、直前になって学費が出せないと保護者から言われ、泣く泣く就職する生徒がいる。そのため「学費が出せないならはっきりと言ってください」と初めに伝える。今では保護者から「ここまでは用意できますが、4年間大丈夫でしょうか」と学費に関する具体的な質問をされるようになった。
  保護者に本音をぶつけていくことで、高校に対する信頼感と子どもの進路に対する現実味が保護者の中にも芽生えてきたのだ。


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