高田 生徒を引き付ける授業のために、教師に求められるものとして、私はもう一つ、テストにおける作問力を挙げたいと思います。
テストには、生徒の学習到達度を測るモニタリングの役割があります。テストの結果を基に教師は「このクラスはこの分野が弱い」といったことを把握し、授業改善に結び付けるわけです。そのためには、明確な狙いを持って適切な問題を作成できる力を、教師が身につけていることが前提となります。
松高 一般的に、定期テストは平均点が60点の問題を作ることが目標とされています。教師全体のレベルアップを図るためには、一部の先生に作問を委ねるのではなく、若い先生を積極的に起用することが重要でしょう。だれがテスト問題を作成しても平均点が60点になれば、すべての先生に同様の力量がついているということ。そして、生徒の実態を共有していることにもなります。
高田 生徒の実態を正確に把握していないと良い問題はできませんし、教科の全領域を見通せていないとポイントをつかんだ問題も出せません。私が在任した当時の岡山朝日高校でも、定期テストであれば60点、実力テストなら45点という平均点を管理できるかどうかが、教師の作問力を測るバロメーターになっていました。
山口 私は、作問力に、採点力という概念をプラスしたいですね。
私が作問するときに常に意識していることが二つあります。一つは思考力や読解力を試す問題を作ること。そうした問題では、正解は一つではなく複数になるので、教師には「生徒の答えを読み取る力=採点力」が必要となります。
もう一つは、これは教科特性にもよりますが、私たちの社会が抱えている現代的課題を問題に盛り込むことです。私は地理を「自然と人間とのかかわりを考える学問」と定義していて、毎回授業の冒頭で生徒にもそう話しています。これからの時代を生きていく生徒たちに、自然と人間の関係の在り方を問いかける問題を出すように心がけています。ここでも教師には作問力と共に採点力が問われます。
高田 テストを通じて、生徒の現代的課題に対する意識を高めようというわけですね。
山口 そうです。生徒はテストのときには特別に集中します。そのときにどんな問題を出すかというのは、生徒の課題意識や思考力を鍛える上で、非常に重要なことだと思います。
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