宇宙のなぞを解明することが、森羅万象を理解することにすべてつながっていくのではないか――。
私がそんな大きな夢を描いて、天文学者を志すようになったのは、小学3年生のころです。とにかく好奇心旺盛な少年でした。生物や植物、石、空、月、星、太陽……。神秘的なもの、美しい事象はすべて興味の対象になりました。中学生、高校生になると、興味の対象は更に広がり、自然科学に加え、絵画や音楽、文学や哲学にも手を伸ばしました。視野の狭い天文学者にはなりたくなかったのです。
大学院への進学を考え始めたころ、その後の私の研究手法に大きな影響を与える重要な研究成果に出合いました。
1970年、一酸化炭素分子の出す電波が宇宙空間で発見されました。光では見ることができない分子(※1)を観測できるようになったのです。銀河には、「暗黒星雲(※2)」と呼ばれる肉眼では決して見ることのできない暗い領域があります。そこでは、水素や炭素、窒素といったさまざまな原子からなる分子ガス雲(※3)が形成されています。その分子が運動することで発する電波を捉えるのです。
電波で分子ガス雲を調べる手法は、当時はまだ確立していませんでした。しかし、先人たちが研究し尽くしてしまった分野のあとを追うというのは、私の性に合わないと思いました。多少のリスクはあっても新しい分野に挑戦して自分を試してみたい、発見の喜びに満ちた研究生活を送りたい……。そんな思いから、始まって間もない未知の分野に飛び込んでいったのです。
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