指導変革の軌跡 広島県立世羅高校「学力向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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学習・進路指導の強化が生活指導にも好影響

 「がむしゃらにやってきた5年間だった」と、水野先生は世羅高校の改革をそう振り返る。

 教師たちの熱意は確実に生徒に伝わっている。06年度入試でも国公立大合格者は39名と増え(図3)、それに反比例して短大や専門学校進学者は年々減っている。安易に進路を決めず、上を目指して挑戦しようという意欲が高まっているのだ。専門学科の生徒も、普通科の進学実績の向上に勇気づけられ、より高度な資格取得に挑戦するようになっているという。

 この進学率の上昇と共に大きく変わったのが、校内の雰囲気だ。渡辺先生は「学習指導で引っ張ることが生活全般にも良い影響を与えている」と話す。

 「改革前は、生徒の服装も乱れがちで、教師の指導を聞かない生徒が少なくありませんでした。しかし、近年は生活全般に落ち着きが見られるようになり、教師の指導を素直に受け入れる生徒が増えたように思います。部活動や生徒指導部を中心に生活指導に力を入れていますが、補習などの学習指導を通して生徒一人ひとりに目標を持たせ、やるべき課題をしっかりと把握させることが、生徒の自覚を促していると思います」

 部活動も活気を取り戻し、陸上競技部は05年の男子第56回全国高等学校駅伝競走大会で21年ぶりに準優勝を飾った。

 生徒だけでなく教師の意識も変わった。生徒の成長を目の当たりにし、教師にもやればできるという自信が生まれた。生徒の成長を実感できることが何よりの喜びとなっているのだ。しかし、水野先生は「まだ課題は山積み」と慎重な姿勢を崩さない。

 「これまで、生徒の頑張りに支えられ、進学実績を上げてきました。しかし本当に大切なのは、『10年後に自らの能力を発揮できる人材』を育てることです。そのためには、自ら課題を発見し解決する力をいかに身につけさせるかが重要です。学校の体制面でも、3年生になって集中的に補習を行うのではなく、1、2年次から系統立ててビジョンを示し、早期に生徒の意識を高めることが必要です。今はできることを一つひとつしっかりと行って、学校の基盤を固めていきたいと思っています」

図3

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