――近年、生徒の気質変化が指摘され、完全新課程生が入学するようになってからは、その傾向が顕著だといわれています。どのように対応されているのか教えてください。
山崎 近年、本校でも顕著なのは、自分に甘く、能力を出しきる前にあきらめる生徒が多いことです。自分で考えて、課題を解決しようとする姿勢が見られない。以前は不定期だった土曜補習も、定期的に行わざるをえなくなっています。従来のやり方が通用しなくなっているのが現状です。
栗木 行事や部活動を通して、社会性やリーダーシップを育んでいくことは大切です。それは学校が場を設定すれば、生徒同士の学び合いの中で自然と身につけられるものです。しかし、生徒の学力については、教師の教え方や計画の立て方に大きく依存します。そこで、現場レベルで意識し始めているのが初期指導です。今の生徒には、従来私たちが前提としていたさまざまな能力が失われているように感じます。最も深刻なのは、自学自習の姿勢の欠如です。単に教師が言ったことをノートに写すだけではなく、知識を自分の中に取り込んで「理解できているか」「頭の中に入っているか」を自ら確認する力が不足しているのです。本校においては、その部分の初期段階の指導ノウハウを確立していく必要性を感じています。
水谷 今後は本校だけでなく、多くの学校で初期指導の重要性が叫ばれるようになると思います。私たちも先進校の初期指導の取り組み状況を調べましたが、本校と同レベルの学校においても、入学後に予習・復習の仕方を手取り足取り教えているようです。そうした取り組みを参考に議論を重ね、今ようやく本校でも第一歩を踏み出したところです。
堀江 今後の課題は、教師全員でそうした認識を共有することです。1学年の教師は生徒と接して危機感を持ち、具体的に動き出していますが、全体としては、そこまでしなくてもいいのではないかという意見が少なくありません。
栗木 何を覚えさせるか、何をできるようにさせるかということより、まずは勉強に対する心構えをきちんと身につけさせることが大切です。その学習力の前提があれば、2、3年生になって本人が目覚めたときに、その生徒はぐんと伸びるようになります。そこに意識を向けずにいくら頑張って学習指導をしても、結局は生徒の中で知識が内在化せず、教師の努力は空回りするだけ。それを支える知力を鍛え上げることこそが、私たち教師の使命なのではないでしょうか。
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