――生徒の思考を促すには、どのような工夫が考えられますか。
敦見 生徒に課題そのものを設定させるのは、効果的な方法です。「自由にテーマを決めて、レポートをまとめるように」と言うと、生徒は最初、戸惑います。しかし、図書館で数時間過ごさせると、何とかテーマを決めて自分なりにレポートをまとめてきます。
レポートは、提出のみで終わらせず、皆の前で発表させて、自己評価に加えて他者による評価もしています。ほかの生徒の説明を理解できるかという「聞く力」、ほかの生徒を理解させられるかという「話す力」を育てる訓練にもつながります。
山本 思考力や読解力は他者とのコミュニケーションを通じて磨かれるものですから、教師と生徒、あるいは生徒同士の対話の場を設け、プレゼンテーションやディスカッションを導入することは、理科に限らず、どの教科でも積極的に行うべきでしょう。
敦見 対話の内容は、授業に関係のないことでもよいと思います。熊が出没したというニュースがあれば、「捕らえた熊は処分すべきか、放すべきか」と問いかけてみる。放すのであれば、「どこに放すべきか」、離れた場所に放せばよいという生徒がいれば、「放した地域との間でトラブルにならないか」などと、どんどん思考を深めていきます。
答えを用意する必要はありません。答えのある問いには自信満々に答える生徒でも、答えのない問いに対しては声が小さくなったりします。そういう生徒には「面白い答えだね」「そういう考え方もあるよね」などと声をかけることで、「自分なりの考えを発表してもいいんだ」という意識を芽生えさせていくのです。
山本 そういう話し合いでは、結論を求めないようにしています。成績や評価とは無関係に意見を交わし合える場面を設けて、生徒の積極的な参加を促すのです。話題は教師の「思いつき」でよいのではないでしょうか。日々のニュースなどからタイムリーな話題を選べば、生徒が考えるきっかけになりやすいはずです。
敦見 教師自身が社会の出来事に興味を持ち、生徒が関心を持ちそうな話題を提供することが大切です。
山本 授業と日常を切り離さずに、自分に身近なものとして学ばせることができれば、科学的リテラシーに関連する学力の向上につながるのではないでしょうか。
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