特集 変わる高校入試・中学校の指導
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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拙速に答えを求める生徒に思考する楽しさを教える

敦見 大学教授などを招いた「出前授業」にも、生徒は意欲的な態度で臨みます。専門家の話は、教科書にはない魅力があります。ただ、外部の講師に依頼するときには、丸投げにしてしまうのではなく、生徒の意欲や態度を観察しながら、高校側が調整するように注意しています。

 

山本 私は毎年、最初の授業で、アインシュタインの話をします。そして、タイムマシンやブラックホールなどに触れて、最終的には「生物とは何か」という問いかけにつなげます。物理学では人間も机も同じく物質に位置づけますが、生物学は生物と無生物を分けて捉えます。それを説明した上で、「生物と無生物の違いは何か」という疑問を投げかけるのです。生物学の位置づけを明確に意識させることによって、学習意欲が高まればと思っています。

 

敦見 私も1年生の最初の授業では、「生物って何だろう」と問いかけています。実は、生物学も含めて世の中には解明されていないことが山ほどあり、教科書は解明された一部の事実を記しているにすぎないと説明します。これから自分たちが学ぶことが、どういう意味を持つかを意識させるためです。同時に、「現時点では解明されていない、答えの出せない問題も考え続けよう」と呼びかけます。そういう根源的な問いは、思考の訓練には最適です。

 

山本 今の生徒は、拙速に答えを求めようとする傾向がとても強い。腰を据えてじっくり考える姿勢が養われていないと思います。

 

敦見 詰め込み型の学習に慣れてしまっているのでしょう。思考を重ねて答えを導いたり、答えのない問いを考え抜こうとしたりする気持ちは、薄らいでいるようです。それとは逆に、反射的に答えの出るような問題には非常に強い。最近の生徒を見ていると、勉強を「こなしている」という印象があります。

 

山本 そういう生徒たちに対し、いかに思考することの楽しさを教えるかは、科学的リテラシーのプロセス2・3の育成に直結する課題といえるでしょう。

 

敦見 勉強に限ったことではなく、何かに打ち込んだり、考え抜いたり、ものを作り上げたりすることの楽しさを体験的に知ることは、大学で学問を追究したり、将来的に社会でキャリアアップしていく上でも重要だと思います。

 


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