――高校入試の理科では科学的リテラシーを問うような問題が見られます。これらの問題に対応する力を持った生徒を、高校で更に伸ばすためには、どのような指導をしていけばよいのでしょうか。
山本 いわゆる科学的リテラシーは、理科だけに関係する学力ではありません。特にプロセス2・3には読解力や表現力が含まれ、日常生活における問題解決能力にも密接にかかわっています。単に問題を解けるようにするのではなく、大学や社会でも生かせる能力を意識した授業を心がけるべきでしょう。
敦見 科学的リテラシーがカバーする学力は幅広く、「生きる力」にもつながっています。この力を伸ばすために、理科ではどのようなアプローチをすべきか。私は、従来の授業をベースにしてプラスアルファの改善を加える、という考え方がよいと思います。そのプラスアルファをより効果的なものにするためには、生徒の現状や課題を正確に把握しておかなくてはなりません。
山本 科学的リテラシーを伸ばすための出発点となるのは、生徒の興味・関心です。これがなければ知識は身につきにくく、知識が足りなければ探究心も生まれない。逆に言えば、興味・関心が高ければ学習の好循環を生み出せます。ただ、最近の生徒は、その面はかなり弱くなっていると言わざるをえないでしょう。
敦見 同感です。勉強だけでなく、生活全般に対する興味・関心も高いとは言い難い。ただ、根本から意欲がないというわけではありません。興味・関心を働かせる体験が少なかったために、慣れていないだけです。
私はアノマロカリスなどの化石を博物館から借りて、授業中に生徒に回覧させています。最近の博物館は、そのような依頼に快く応じてくれます。写真でしか見たことのない化石を渡され、しかも触ってよいと言われると、生徒はまるで小学生のように目を輝かせます。
そういう場面では、まさに「百聞は一見にしかず」の言葉通りに、教えたいことを生徒が自主的に学び取るのを実感します。
山本 「本物」を見せることは重要です。教科書の中の遠い存在だったものや出来事が、一瞬のうちに自分と同じ次元の対象になる。そういう体験から興味・関心が芽生えて探究心が生まれ、科学的リテラシーが育っていくのだと思います。
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