特集 変わる高校入試・中学校の指導
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【教科事例・理科】

高校入試問題分析と今後の指導法

従来の授業へのプラスアルファで科学的リテラシーを伸ばす

PISA調査によって注目される科学的リテラシーを試す問題は、
高校入試でも見受けられた。
こうした力を伸ばすためには、どのような授業を行うべきか。
その研究に取り組み、積極的に授業改善を行っている
現場の教師にお話をうかがった。

科学的基礎知識を問う問題が主流

 PISAでは、「読解力」のほかに、数学に相当する「数学的リテラシー」、理科に相当する「科学的リテラシー」について調査をしている。「PISA2000」および「PISA2003」では、日本の生徒はいずれも1位グループに入った。
  PISA2003では、科学的リテラシーは「自然界および人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」であると定義されている。 このPISAの科学的リテラシーは、「科学的知識・概念」「科学的プロセス」「科学的状況・文脈」の三つの側面から構成されている。
 このうち、科学的プロセスの観点から、06年度の高校入試問題を分析した。PISA2003科学的リテラシー調査で規定されている次の三つの科学的プロセスに基づいている。

■プロセス1
科学的現象を記述・説明し、予測する

 プロセス1に分類されるのは、基本的な計算問題や知識問題で、科学的な知識が本質的に問われる。高校入試では、教科書等で扱う生物や現象などの名称、化学反応式や計算などが多く出題されている。例えば、滋賀県高校入試の大問2小問5(問題例1)などがあてはまる。

問題例1

■プロセス2
科学的探究を理解する

 プロセス2に分類される問題では、科学的に探究できる課題を認識し、伝達できるかどうかが問われている。科学的探究に必要な証拠を特定すること、比較すべき事柄は何か、変更または制御すべき変数は何か、関連するデータを収集するために採るべき措置は何か、という問いになる。
 ある結論を導くために、実験方法をどのように改善すればよいかを考察する問題や、示された結論・事象がどのような根拠から導かれるかを問うものが見られる。

■プロセス3
科学的証拠と結論を解釈する

 プロセス3に分類される問題では、結論のために、科学的に見いだされた事柄を証拠として解釈できるかどうかが問われる。科学的情報を検索し、科学的証拠に基づき結論を下すこと、結論に達するために立てられた仮定を特定すること、などが問われる。自らデータを解釈し、結論まで導かせる問いが見られ、熊本県高校入試の大問1小問4(問題例2)などがこれにあてはまる。

問題例2

 以上のような規定の下で、06年度の47都道府県の公立高校入試問題を分類したところ、1526の小問のうち、93.1%(1421問)がプロセス1に分類された(図1)。高校入試では、教科書などに掲載されている知識、基本的な計算が重視され、「中学校で学習した内容」の定着度を測って入学者を選抜しているということがわかる。

科学的リテラシーの調査結果に注目

 3年ごとに実施されているPISA調査だが、最新の調査であるPISA2006では、科学的リテラシーが重点的に調査された(PISA2000は読解力、PISA2003は数学的リテラシーが重点科目)。 これまでのPISA調査では、読解力の低下が見られたため、読解力の育成が大きな課題となったが、PISA2006ではどのような結果が出るだろうか。今後の動向を慎重に見ていく必要があるだろう。

図1

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