広島県立大門高校が理数コースを設置したのは、2003年。学区改編により、学校間の競争が激しくなったからだ。進路指導主事の柳浦達宏先生は、当時を次のように述べる。
「本校には長年、地区のトップ校として成績上位層が多数入学してきました。しかし、98年に本校の属する福山地区で総合選抜制度が廃止され、近隣の伝統校へ上・中位層の流出が始まりました。更に、03年に全県一円入試となることが決まり、競争激化は必至の状況でした」
近隣の高校は国際コースや理数科を立ち上げ、学校の特色を打ち出し始めていた。手を打たなければ、生徒の流出は止まらない・・。そうした背景から、改革の端緒として打ち出したのが理数コースの設置だった。
設置に際しては、二つの柱を掲げた。一つは国公立大進学実績を出す特進クラスとしての役割、もう一つは理数教科に興味を持つ生徒の力を伸ばしていくことだ。ただ単に、理数教育を充実するだけでは、学校としての独自色は出せない。そこで、最終的な進路は必ずしも理系にはこだわらず、文系にも対応できる学力を身につけられるよう、科目選択の幅に柔軟性を持たせることにした。岡田啓司校長はその意図をこう話す。
「本校の進路指導の特徴は、生徒一人ひとりの適性や将来の目標を教師がしっかり把握し、希望の進路へと導いていくことです。最初は理数系に興味を持って入学しても、進路学習などを進めるうちに志望が文系に変わる生徒も少なくありません。生徒の可能性を幅広く見据えた進路指導の伝統を生かし、本校ならではの理数コースにしようと考えました」
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