中学校の現場から 学力調査

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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データに基づく指導改善が教師の意識をも変える

 学習指導には、学力調査の結果をどのように反映しているのだろうか。まず各教科部会で学力の実態をつかみ、議論を重ねて次年度の指導方法を練る。年度当初の教員研修で、各教科主任が指導方針を伝え、教師全員で課題や目標を共有する。例えば、06年2月の学力調査では、読書量が少ないことが示された。これを受けて、06年度から毎日の朝学習を朝読書に切り替えた。
 「当初、朝学習を廃止することを不安視する教師もいました。ところが、始めてみると、休み時間にも読書する生徒が出てくるなど、意欲的に本を読むようになってきたのです。落ち着いて学習に取り組む姿勢も育ってきているように感じます」(末武先生)
 末武先生担当の社会では、範囲が決まっている定期テストには対応できるが、範囲が広い学力調査で得点できない傾向が出た。
 「過去に学習した分野の内容を、生徒たちは時間が経つと忘れてしまっているのです。今後、点ではなく、線で考えさせるような仕掛けをしようと考えています」
 旧カリキュラムでは、中1で地理分野、中2で歴史分野を学ぶ「座布団型」という手法だった。しかし現行カリキュラムでは、地理と歴史を中1、中2で並行して学ぶ「π(パイ)型」だ。そのため、各分野の授業の間隔が長くなり、歴史分野では時間的なつながりを線として捉えにくくなったのではないかと、末武先生は見ている。
 「今まで以上に年表を活用しようと考えています。ある時代の事象について歴史的なつながりを意識させるためです。地理的な要素も年表に盛り込み、歴史と地理を関連させて学習できるように工夫していきます」
 月別で教科ごとに授業を全教師に公開し、意見交換を通じて授業改善に役立てている。
 「教師がいかに変われるかが、指導改善では最も大切です。目に見える結果を出すという教師の意識は、学力調査の前後で相当違います。具体的な目標を掲げて取り組みを続けることで、保護者も『学校の指導は丁寧』という印象を持つようです」(末武先生)
 学力調査によるデータを軸に「PDCAサイクル」を回すことが、青葉台中学校の指導改善や地域からの信頼に着実につながっている。


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