SELHi時代の英語力の評価法 評価軸の一貫したテストで指導内容の効果を測り生徒の意欲を高める
根岸雅史

▲東京外国語大学大学院教授

根岸雅史

Negishi Masashi

1959年生まれ。東京学芸大学大学院教育研究科英語教育専攻修士課程修了。レディング大学大学院言語学研究科応用言語学専攻修士課程修了。同大より博士号取得。専門は英語教育学・言語テスト研究。英語テスト開発や学力調査に数多く関わる。著書に『基礎からの新総合英語』(数研出版)、共著に『無責任なテストが「落ちこぼれ」を作る』(大修館書店)など。

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SELHi時代の英語力の評価法

評価軸の一貫したテストで指導内容の効果を測り
生徒の意欲を高める

評価には、生徒の学力の伸びを具体的な数値で測り、その結果を指導の改善につなげていくという役割がある。では、現在、高校で行われている評価はその役割を十分に果たしているのか。評価法における課題と改善の観点について、言語テスト研究の第一人者である根岸雅史・東京外国語大学大学院教授にうかがった。

学習内容と測りたい力に見合ったテストになっているか

 高校で行われる評価法は、「テスト」が一般的な方法です。現在、多くの高校で行われているテストを見ると、大きく三つの課題が浮かび上がってきます。
  まず一つめは、「測定しようとする力に対応したテストになっているか」です。コミュニケーション能力の育成を目標に掲げ、ディスカッションやディベートに力を入れて指導している高校でも、評価はペーパーテストだけで行っているというところが少なくないようです。また、例えばスピーキングのテストの結果が伸びたとき、それをディスカッションやディベート活動の成果と考える先生がいらっしゃるようですが、その解釈は必ずしも正しくはありません。スピーキングの力と、ディスカッションやディベートで培われる力は全く同一というわけではないからです。日々の指導とそこで培われる力、そしてその評価が一致していないのです。
  高校で行われるテストは、測ろうとする力を可能な限り直接的に評価するものであるべきです。そうすれば、指導が生徒の英語力に結び付いているかどうかが分かりますし、指導の改善にもつながります。
  二つめの課題は、「テスト作成・分析に求められるスキル」です。指導法に優れている教師でも、テストについて理論的に勉強されている方は少なく、テストの作成から採点、結果の解釈まで整合性を持って実践できていないのが現状です。基本的な例を挙げれば、指導開始前に育成したい力を測っていないケースです。指導前の生徒の力を把握しておかなければ、指導の成果も当然測ることはできません。
  テストの作成同様、その結果の分析も慎重に行うべきです。ライティングの成績が伸びたからといって、ライティングの指導法が良かったと単純には言えません。英語の授業時間数が増えた、少人数制の授業になったなど、いろいろな条件を踏まえた分析を行う必要があります。
  そして三つめの課題は、「テストの評価軸が一貫しているかどうか」です。英語は積み上げ型の科目なので、一貫した尺度で測っていけば、学習の成果がスコアやレベルのアップによってはっきりと見えてきます。しかし、高校の定期テストでは、高1なら高1、高2なら高2の学習目標に到達しているかを測ります。したがって、高2生で中学卒業レベルの英語力しかなかった生徒が、指導によって高1レベルまで伸びたとしても、高2レベルには達していないために、英語力の伸びが確認しにくいわけです。


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