指導変革の軌跡 長崎県立五島高校「学力向上」
長崎県立五島高校

長崎県立 五島高校

2006年に創立106周年を迎えた伝統校。県内の公立高校で唯一、衛生看護科を設置する。伝統校としての誇りと自覚を持ち、自ら学び、考え、行動できる人材の育成を目指す。柔道部は男子・女子共に全国高校柔道選手権大会出場の実績を持つ。

設立●1900(明治33)

形態●全日制/普通科・普通科スポーツコース・衛生看護科/共学

生徒数(1学年)●約220名

06年度進路実績●国公立大には東京大、神戸大、広島大、九州大、長崎大、熊本大、県立長崎シーボルト大など88名が合格。私立大には慶應義塾大、早稲田大、同志社大、近畿大、福岡大など延べ102名が合格。

住所●長崎県五島市池田町1-1

TEL●0959-72-3505

WEB PAGE●http://www15.ocn.ne.jp
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森温子

▲長崎県立五島高校

森温子

Mori Nagako

教職歴20年目。同校に赴任して6年目。進路指導主事。「当たり前のことが当たり前にできる生徒を育てたい」

梅木忠

▲長崎県立五島高校

梅木忠

Umeki Tadashi

教職歴29年目。同校に赴任して2年目。3学年主任。「生徒の可能性を最後まで信じて指導にあたっていきたい」

原昌紀

▲長崎県立五島高校

原昌紀

Hara Masaki

教職歴19年目。同校に赴任して5年目。教務主任。「一つのことを最後までしっかりとやりきれる生徒を育てたい」

辻俊郎

▲長崎県立五島高校

辻俊郎

Tsuji Toshiro

教職歴19年目。同校に赴任して6年目。1学年主任。「インパクトのある授業で数学の面白さを伝えていきたい」

濱田猛

▲長崎県立五島高校

濱田猛

Hamada Takeshi

教職歴13年目。同校に赴任して3年目。2学年主任。「まずは簡単なことから100%できるようになってほしい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡78


長崎県立 五島高校「学力向上」

生活指導と自学自習の徹底で、進学実績の向上を図る

● 実践のポイント
入学直後の生活指導を徹底させる
学習の記録、週末課題で学習習慣の確立、学習時間の確保を図る
校舎を365日開放し、生徒の自学自習をサポート

地元の中学生の実態が直接、高校の指導に影響

 2006年春、長崎県立五島高校の教師たちは、街のあちこちで同校の話を耳にした。
 「五島高校の進学実績が、最近伸びているらしい」
 「今年は東大合格者が出たようだ」
 それほど大きな街ではないだけに、こうした情報はすぐに広まる。しかも、40年ぶりの現役東京大合格者とあってはなおさらのことだ。
 実際、同校の躍進は目覚ましい。ここ10年の進学実績を見ても、卒業生の数が減少していく中で、コンスタントに70~80名が国公立大に合格している。とりわけ04年度入試からは、国公立大は80名、旧帝大も10名前後に増加。06年度入試では、ついに東京大文科一類の合格者が出た(図1)。

図1

 同校は、五島列島の中で最も大きい福江島にある、市内最大規模の高校だ。そして、県内でも有数の伝統校でもある。
 「しま」に位置する高校の特性から、地元中学校の卒業生が生徒の大半を占めている。そのため、地元との一体感が生まれやすく、中学校の指導が学力面・生活面に反映しやすいという状況にある。
 進路指導主事の森温子先生は、5、6年前の様子を次のように振り返る。
 「00年ごろ、本校は創立100周年を迎え、学校全体が盛り上がっている雰囲気だったようです。同時に、生活態度や服装の乱れた生徒が少なからずいて、教師は休み時間も校内を巡視するなどの対応に追われていたようです。私が赴任した01年には、その影響が若干残っていたものの、先生方の指導が実を結び、ずいぶん落ち着きを見せていました。学力的には成績上位層の伸びが今一歩ではないかという状態でした」
 まずは、校内に学習を中心とした雰囲気を取り戻すことが喫緊の課題だった。

宿泊研修の集団訓練で規律ある生活態度を

 01年度から教師たちは生活指導の強化に乗り出した。服装や挨拶について、教師全員で日常的に注意するだけでなく、定期考査の最終日や卒業式の前日などには容儀指導を徹底的に行った。
 02年度からは、宿泊研修を見直し、生活指導の一層の徹底を図った。実施時期をそれまでの6月から入学式翌々日に早め、学習指導と生活指導が混在した内容から、生活指導中心に改めた。教務主任の原昌紀先生は、次のように述べる。
 「4月に行うのは早すぎる、という意見もありましたが、1日でも早く五島高校生としてのあるべき姿を示すことが大切だと考えました。入学直後に生活指導を徹底させたことで、その後の指導がスムーズにできるようになったと思います」
 宿泊研修の最大の目玉は集団訓練だ。体育科教師を中心に、クラスごとに集合や挨拶の仕方を指導する。少しでも動いたり列が乱れていたりすれば、即座に教師の叱責が飛び、何度もやり直させる。2学年主任の?田猛先生は「1人、2人の生徒が怒られることは中学校の指導では珍しくありませんが、200名近い高校生が一か所に集められて、厳しく指導されることは、1年生にとってはものすごくショックだと思います。高校とはこういうところなのだ、と実感させるためには適した取り組みだと思います」と話す。
 この集団訓練は体育の授業などで引き続き行われ、秋の体育祭では集団行動の種目で、1年生は班ごとに成果を競い合う。半年間の厳しい訓練により、挨拶もきちんとできるようになり、学年の雰囲気にも凛としたものが漂うようになるという。


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