指導変革の軌跡 長崎県立五島高校「学力向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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上位層の島外への流出で進学保証が至上命題に

 生活指導の徹底で落ち着きを取り戻した同校だが、恒常的に抱える課題として、成績上位層の島外への流出がある。特に難関大や医学部を狙える中学生ほど、長崎市などの本土の高校に進学する傾向がある。島嶼(しょ)地域に位置する同校にとって、難関大への進学保証は、入学生確保のためにも重要だった。
 生活習慣が確立した今こそ、学力向上への取り組みを加速するときである。同校は、学習習慣の確立と家庭学習時間の確保に取り組み始めた。
 「家でじっくり本を読んだり、学習の時間を確保している生徒は、年々減っています。難関大を狙える力を持っているにもかかわらず、1年次の中間考査期間中の自宅学習時間がゼロだった生徒もいるほどです。1年次のうちに学習習慣を確立することが急務でした」(原先生)
 そこで、半期に1回程度実施していた学習時間調査を、毎日記入させるようにした(図2)。学期に1回、学年ごとに集計し、全体動向を分析。学力検討会で話し合い、週末課題の出し方や分量等の方針を決めた。1学年主任の辻俊郎先生は、次のように述べる。

図2

 「調査開始当初は、1週間の平均学習時間が20時間を切っている状態でした。そこで、1、2年生は最低20時間、3年生は25時間の目標を掲げました。担任は毎日または毎週、記入用紙をチェックし、教科に偏りがある生徒や極端に学習時間が少ない生徒には面談で注意を促しています」
 土日も生徒を机に向かわせるため、週末課題も出すようにした。1、2年次は国数英、3年次には地歴・公民も加わる。各教科とも1時間くらいで終わる量の課題を出す場合が多い。週末だけで終わらない生徒は、提出期限を延期してでも必ず提出させている。決められたことを最後までやり遂げさせることを重視しているからだ。
 「部活動の遠征などがあると、金曜日の夜から日曜日の夜まで、家を空けることも少なくありません。そのため、週末に遠征があるときは、週の半ばまでに生徒自ら教科担当に課題を取りにいくように、部活動の顧問が指導しています。教科担当も水曜日までには課題を作成しておき、部活動顧問との連携を図っています」(濱田先生)
 1年次の模試成績が7月から10月にかけて顕著に伸びているのも、こうした学習習慣の確立の成果といえるだろう(図3)。

図3

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