特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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中高の教師の連携が一貫校の成否を分ける

  以上、各類型別の特徴や課題を見てきた。6年間を見通してどのような指導方針を立て、それを実践していくのか、そのために、中高の教師がいかに連携していくのかという点が、中高一貫校の成否を決めるポイントになると、工藤部長は指摘する。
 「中高が分断されている状態では、互いのことを知らないために、中学校は、とにかく一生懸命に生徒の面倒を見て高校に送り出す、高校は、生徒が中学校で受けてきた指導を知らないまま、一から指導を模索するということになりがちです。生徒の成長は連続しているという視点に立ち、中学校は高校の指導を見据え、高校は中学校の内容を踏まえた指導を追求することが、互いの指導改善につながるのです」
 中高の教師が乗り入れ授業や研究授業などを通して交流することによって、「中2で学ぶ単元は高1のあの単元につながっていく」「高2でこの公式を理解するためには、中学校でこの単元を習得させる必要がある」といった気づきが生まれ、中高の指導改善に生きるというわけだ。更に、工藤部長は「中高一貫校の取り組みは、一般の中高連携にも示唆を与えるものになる」とも指摘する。
 「多くの中高一貫校では6年間を見通した指導計画がつくられています。『総合的な学習の時間』も6年間で考えている場合が多い。そうした系統性のある指導計画は、一般校が中高連携を行う際、参考になる部分があるのではないでしょうか」

教育資産を生かして広がる一貫校の可能性

  中高一貫校の制度化から8年。まだ卒業生がいない学校が多い中で成果を探ることは難しいが、今後の展開と可能性はいくつか指摘できる。
 「当面は、初期効果として中高一貫校であること自体が学校としてのアピールになります。しかし、次第に普通の学校と認識されるようになります。そのときまでに生徒や保護者を引き付ける魅力をいかに備えているかが課題です。選ばれる学校になるため、進路実績や教育内容、部活動の実績など、学校の特色を明確化していく必要があります」
 高校段階で、特定の方向に進みたい生徒にはそのためのコースを用意するなど、生徒の学力や将来の志望に応じて選択肢を広げていくことも一つの方法だろう。また、「総合的な学習の時間」や選択教科、学校設定科目を活用し、特色を打ち出す方法もある。体育や芸術などに力を入れる学校、情報活用力の育成を打ち出す学校、伝統文化や地域教育に特色を持つ学校など、各校がそれぞれの教育資産や地域との連携を通して特色を打ち出していくのだ。
 中高一貫校が、望ましい接続教育の在り方を示すことができるのか、今後の展開に期待したい。

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