特集 公立中高一貫校から学ぶ中高連携
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教育課程の特例措置を生かす

  中高一貫校には、三つの設置形態とも、教育課程の特例が認められている。中学校では、選択教科の上限緩和(※1)と新しい選択教科の設置(※2)が可能だ。高校では学校設定教科・科目の単位数を増やすことができる。例えば、中学校で選択教科「環境」を、高校で学校設定科目「環境」を設置し、連続した教育を行うことが可能になる。工藤部長はこうした特例こそが、中高一貫校の特徴を決める最大の要素になると強調する。
 「中高一貫校の特徴を規定するのは、設置形態ではなく、各校がどのような生徒を育てようと考えているのかということです。例えば、コミュニケーション能力の育成に力を入れる学校、科学的な素養の育成を目標に掲げる学校など、育成したい生徒像に基づき、どのような教育課程を編成し、指導していくのかが重要です」
 中等教育学校と併設型の特例措置では、高校の内容を中学校に前倒ししたり、中学校の単元を高校に先送りしたりするなど、相互に学習内容を入れ替えることも可能だ。ただ、先取り学習をするとしても、その範囲は同一教科内の特定の単元に関して、中高の順番を入れ替えたり、関連の深い単元をまとめて教えたりするなどにとどまるようだ。
 よく指摘されるように、高1の1学期の内容を中3の3学期に行うというような、全教科的な前倒しは少ない。公立校である以上、受験学力の伸長だけを目的とせず、適度な進度とバランスを保った教育課程の編成が求められているのである。

※1)各選択教科の授業時数(第1学年:年間30単位時間以内、第2・3学年:年間70単位時間の範囲内)を各学校において増加することができる。
※2)必修教科の授業時数を年間70単位時間の範囲内で減じ、内容を代替できる選択教科の授業時数の増加に充てることができる。

地域人材の活用で地域に密着した教育を行う連携型

  連携型は、中学校は市町村、高校は都道府県というように設置者が異なり、各設置者が協議の上で教育課程を編成する。複数の中学校と一つの高校による連携の形態が一般的だ。
 連携型の学校は地域に密着している場合が多いため、この特色を生かして、郷土学習や地域教材の利用などを積極的に推進している学校もある。また、地元の学校を育てようという地域の人々の思いも強いため、地域の人材を効果的に活用できるメリットもある。
 連携型の多くの学校が、高校から中学校への乗り入れ授業を実施しているが、元々別の学校であるため、6年間を見通した教育課程というのは編成しにくい。また、学校選択はあくまで自由であるため、中学校の卒業生が必ずしも連携先の高校に進学するとは限らないということも、高校にとっては悩みの種だ。
 「高校の教師が頑張って乗り入れ授業を行えば、中学生の学力は上がりますが、そのために生徒が地域を離れて、都市部の高校に進んでしまうことがありえます。先生が頑張れば頑張るほど、生徒が他校に流れてしまうというパラドックスが生じる可能性があります」
 しかし、それが高校の緊張感を高め、魅力ある学校づくりへのモチベーションになることも確かだ。競争環境にあることが、学校改革を促す効果をもたらしているのである。


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