指導変革の軌跡 愛知県立西春高校「進学実績向上」
愛知県立西春高校

愛知県立西春高校

「真摯・創造・奉仕」を校訓とし、保護者・地域社会の期待に応える学校を目指す。65分授業や基礎・早朝テストなどの進学指導に力を入れ、2006年度には愛知県の「体力づくり優良校」に選ばれるなど、文武両道において顕著な実績を上げている。

設立●1978(昭和53)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約320名

06年度進路実績●国公立大には北海道大、東京大、名古屋大、名古屋工業大、京都大、愛知県立大、名古屋市立大など173名が合格。私立大には早稲田大、南山大、同志社大、立命館大など延べ873名が合格。

住所●愛知県北名古屋市弥勒寺西2-1

TEL●0568-23-6166

WEB PAGE●http://www.
nishiharu-h.aichi-c.ed.jp/


上島昌之

▲愛知県立西春高校

上島昌之

Kamijima Masayuki

教職歴31年目。同校に赴任して10年目。生徒指導主事。「生徒が努力は裏切らないと信じられる指導をしたい」

江口誠二

▲愛知県立西春高校

江口誠二

Eguchi Seiji

教職歴26年目。同校に赴任して14年目。教務主任。「たゆまぬ授業改善によって、生徒に信頼される学校にしたい」

高木敦司

▲愛知県立西春高校

高木敦司

Takagi Atsushi

教職歴23年目。同校に赴任して10年目。進路指導主事。「生徒一人ひとりの立場に立った指導を心がけています」


*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡81


愛知県立 西春高校「進学実績向上」

独自の合格判定基準を設定し、生徒の進路実現に生かす

● 実践のポイント
学校独自の学力判定、志望校の合格判定基準を設定し、進路検討会を精緻(ち)化
生徒と保護者対象の進路ガイダンスを充実させ、進路意識を高める
全校体制で小論文指導を行い、国公立大後期日程まで粘る意欲を引き出す

教師の力量に頼る指導で、実績にバラツキが

 愛知県立西春高校が、全校を挙げて改革に乗り出したのは1997年度だった。前年度の卒業生の大学合格実績がかなり落ち込み、名古屋大などの国公立大だけでなく、東海地区の難関私立大である南山大の合格者数まで大きく減らすこととなったからだ。
 予兆はあった。89年度から愛知県の公立高校入試に複合選抜制度(注1)が導入されたことで、学力上位層が上位校へ集中し、同校の入学者の学力が低下していた。続いて93年には、同校の最寄り駅に名古屋市内からの地下鉄相互乗り入れが始まった。名古屋市内へのアクセスが格段に良くなり、沿線に住む学力上位層の生徒が名古屋方面の難関校に流れていったのだ。
 しかし、もっと大きな原因が校内にあった。教務主任の江口誠二先生は、当時を次のように振り返る。
 「それまでの本校の進学指導は、個々の教師の力量に頼っていた面がありました。熱心な教師が学年団を引っ張ったときは、進学実績が高いけれども、そうでないときは伸び悩むなど、年度ごとに進学指導にバラツキがありました。複合選抜制度の導入以降も、教師個々の力量で進学実績を何とか維持していましたが、97年度入試ではその悪い面が如実に表れたのです」

注1)公立高校がA・Bの2つの入試日程に分かれ、受験生はそれぞれ1校受験できるという制度

西春独自のPランクと大学ボーダーを算出

 教師個人に頼る指導から脱却し、組織として進路指導に取り組む必要がある…。そう痛感した同校は、まず進路検討会の方法を見直した(図1)。3年生の進路検討会は年6回行うが、出願校を絞り込む11月と1月の検討会では、事前にプレ検討会を行い、生徒一人ひとりの学力と大学の難易度を、学校独自の基準で把握することにしたのだ。

図1

  11月は6日間、1月は約4日間の検討期間を設け、その前半をプレ検討会に充てた。参加する教師は、進路指導部と3年学年団の一部、学年を問わず進路指導経験に長けた数名である。議題は、生徒のパーソナルランク(Pランク)付けと、大学ランキング・ボーダーの修正となる。Pランクとは、外部模試と校内模試の結果を考慮しながら、生徒一人ひとりの学力を合議により判定していく、学校独自の学力基準だ。進路指導主事の高木敦司先生は、導入の背景を次のように述べる。
 「経験の浅い教師は、模試の偏差値を鵜呑みにして合格可能性を判断してしまいがちです。しかし、生徒の実際の学力を判断するためには、例えば数Ⅲ・数Cの授業まで受けた時点での成績なのか、数Ⅱ・数Bまでの成績なのか、物理と生物のいずれを選択したものなのかなど、選択科目や履修状況まで考える必要があります。そこで、選択科目や履修の状況、校内模試の成績などを総合して15段階のPランクを算出し、志望校を絞り込むための基準の一つにしています」
 外部模試の大学ランキング・ボーダーについても、同校独自の視点から修正している。西春ランキング・ボーダーの対象校は、県内の中堅私立大と首都圏・関西圏の主要私立大、全国の国公立大だ。同校では「該当年度の志望動向や、ランキングに対する反動は予想できる」(高木先生)として、外部模試の大学ランキング・ボーダーや、過年度の志望動向や他大学の募集状況などを反映させて、独自の大学ランキング・ボーダーをつくっている。
 全体検討会では、このPランクと西春ランキング・ボーダーを基に、合格可能性をA~Cの3段階で判定する。
 「私たちが考え出したこの二つのシステムについて、主要大学で追跡調査をしたところ、A判定の生徒は8割、B判定の生徒は5割が合格していました。精度はかなり高いと自負しています」(江口先生)


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