愛知県立西春高校が、全校を挙げて改革に乗り出したのは1997年度だった。前年度の卒業生の大学合格実績がかなり落ち込み、名古屋大などの国公立大だけでなく、東海地区の難関私立大である南山大の合格者数まで大きく減らすこととなったからだ。
予兆はあった。89年度から愛知県の公立高校入試に複合選抜制度(注1)が導入されたことで、学力上位層が上位校へ集中し、同校の入学者の学力が低下していた。続いて93年には、同校の最寄り駅に名古屋市内からの地下鉄相互乗り入れが始まった。名古屋市内へのアクセスが格段に良くなり、沿線に住む学力上位層の生徒が名古屋方面の難関校に流れていったのだ。
しかし、もっと大きな原因が校内にあった。教務主任の江口誠二先生は、当時を次のように振り返る。
「それまでの本校の進学指導は、個々の教師の力量に頼っていた面がありました。熱心な教師が学年団を引っ張ったときは、進学実績が高いけれども、そうでないときは伸び悩むなど、年度ごとに進学指導にバラツキがありました。複合選抜制度の導入以降も、教師個々の力量で進学実績を何とか維持していましたが、97年度入試ではその悪い面が如実に表れたのです」
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