私は、小学3年生から高校卒業まで、岐阜県の高山市で育ちました。自然に囲まれた地域でしたから、昆虫を捕ったり、夏には毎日、川で泳いだりしていました。自然科学への興味は、このころから培われていたのだと思います。
中学校ではよく実験をしました。といっても、理科の授業ではなく、放課後、理科好きの友達と実験室に集まり、さまざまな薬品で化学反応を試していたのです。理科の先生がついてくれるときもありましたが、基本的には自由でした。実験の面白い点は講義のように座って黙って聞くのではなく、自分の思い通りにできることです。結果を予想しながら計画を立てる、という自分なりの工夫ができます。結果が予想と違っても、そこから理由を考えるのが楽しかったのです。
実は、中学校の卒業文集では、こんなことを書きました。「高校を卒業したら、できることなら大学に入って、化学や物理の研究をしたい。現在できているプラスチックの欠点を取り除いたり、いろいろ新しいプラスチックを作り出したりしたい…(後略)」。当時は弁当をビニール風呂敷で包んでいましたが、弁当の熱で伸びてしまい、冷えると元に戻らないという欠点がありました。それを改良できないかと思ったのです。大学進学時には、化学、生物学、電子工学のいずれかを研究したいと大学を選びましたが、作文に書いたように、新しい物質を作りたいという夢を抱いたことが、私の研究人生の原点だと思います。
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