特集 「多様化」する保護者にどう対応するか

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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保護者の多様化の要因は?

保護者の実態が変化し、多様化している背景を、モニターアンケートと学校取材を通して、
3つの観点に整理した。


外部環境
の変化


【高校入試の変化】 近年、学区の拡大や撤廃、入試機会の複数化などによって、生徒は広いエリアから集まるようになった。結果として、学校への信頼度や期待度が高まったり、逆に第1志望の高校ではなかったり、家が学校から遠かったりする場合は、保護者が学校へ足を運びにくくなり、保護者会の参加率が低下するケースもある。

【経済状況の変化】 近年の厳しい経済状況も、保護者の多様化に影響を与えている。地元志向や資格志向が増えているのは、その表れの一端だろう。経済的に苦しい家庭の中には、教育を学校任せにせざるをえない場合もあるという。また、共働きの保護者が多くなっていることもあり、保護者会の参加率の低下につなが っている学校もある。


教育に対する価値観
の変化


 社会の変化に対応して、保護者の教育に対する価値観も多様化してきている。

 教育熱心で、多額の教育費を投資する保護者がいる一方、「そこそ こ志向」で、「宿題が多すぎるのではないか?」「土曜日くらい休ませてあげてほしい」といった要望を口にする保護者もいるように、二極化が 進んでいるという。
 また、学校の情報を信頼する保護者がいる一方で、市販の情報誌やインターネットの情報の方を重視する保護者も出てきた。「数学の成績が伸 びないのは、教師の教え方が悪いのではないか?」など、以前にはなかったような批判が最近増えてきている学校もあるようだ。


コミュニケーション
の変化


 少子化の影響などにより、同世代の子どもを持つ保護者同士の情報交換の場が少なく、悩みや不安を抱えている保護者が増えているようだ。高校に比べて、学区域が狭い小・中学校でさえ、保護者同士の関係が希薄になっているという声もあった。
 保護者間の情報交換の少ない状況は、親子のかかわり方にも影響を与えており、子どもの教育に積極的にかかわる保護者と放任の保護者の二極化が進んでいるとの声がある。積極的にかかわる保護者の中には、過干渉で親の価値観を押し付けようとする保護者も増えているようだ。放任主義的な保護者の中には、子どもとコミュニケーションがうまく取れず、子どもの言いなり、または子どもの自主性を重んじるという保護者も増えているようだ。

教師が体験した「多様化」する保護者像

◎自分の子ども中心に物事を考え、ほかの生徒もそうであるかのように押し付けてくる。校長に言えば聞き入れられると考える保護者もいる。

〈大阪府・私立進学校〉

◎親子の意思疎通がうまくできないために、子どもの言いなり、または子どもの自主性を重んじるという保護者が増えているようだ。生活指 導でも進路決定の際でもこのズレを修正することに時間がかかり、深い話ができない。

〈兵庫県・私立進学校〉

◎早く進学先を決定したいという保護者が多く国公立大後期日程の合否まで待ちきれない。保護者にも粘ることを教える必要が出てきた。

〈静岡県・公立進学校〉

◎大学入試制度の複雑化で、保護者は「学校に任せる」と「もっと詳細に知りたい」とに二極化している。

〈北海道・公立進学校)

◎高学歴の保護者が増え、大学入試など進路に関する情報は豊富だ。しかし、大きい広告ならば信頼できる情報と勘違いしていることも多い。

〈福井県・公立進学校〉

◎塾の自習室で深夜まで学習する生徒も多く、学校よりも塾の教師との人間関係の方が濃い。親子とも塾の言うことを聞く傾向がある。

〈徳島県・公立進学校)

◎子どもの言うことを鵜呑みにして、学校に苦情を言ってくる保護者に唖然とさせられることがある。

〈長野県・公立進路多様校〉

◎自分は簡単に就職できたからか、自分の子どももできるという考えから抜けきれない。今の状況は昔とは違うと理解していても、いざとなると先入観でしか考えられないようだ。

〈岩手県・公立進路多様校〉

全国の『VIEW21』モニター教師(約100名)のアンケート項目のうち、「近年の保護者に対して」の自由回答欄の記述から抜粋

次ページからの5校の事例を基に、
保護者の実態と対応のヒントを考えていきたい


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