教科指導最前線・英語

伊藤 智

愛知県立一宮高校
伊藤 智

Ito Satoshi
教職歴19年目。同校に赴任して3年目。3学年担任。生徒指導係。高体連委員。「生きる力を持ち、元気でたくましい生徒を育てていきたいです」

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教科指導最前線

英語

活動中心の授業展開で実践的な英語力を身につける

大学入試では、英語の実践的な力を一層重視する傾向にある。こうした変化を踏まえ、愛知県立一宮高校の伊藤智先生は、生徒の活動を中心とした授業を展開している。
英語を読んだり書いたりする機会を従来より増やすことで、英語力だけでなく、授業に対する生徒の意識も変わってきた。

英文の全訳はせず英語そのものを理解する

 「スラッシュの位置を直して、もう1回読み直してみよう」
 伊藤智先生の指示に応じて、リーダー役の生徒が英文を読み始めると、ほかの生徒もあとに続く。コーラス・リーディングでは、通常、教師のあとに続けて生徒が音読するが、伊藤先生の授業では生徒がリーダー役を務める。生徒を活動の主体とするためだ。
 伊藤先生がこうした授業に変えた理由には、大学入試の出題傾向の変化がある。
 「近年、英語の入試問題では課題文がより長くなっていることもあり、英文の流れを大きくつかみ、必要な情報を適宜ピックアップするスタイルが主流になっています。英作文にしても、単に日本語に対応する英文を書くのではなく、あるテーマについて自分の考えを含めて書く、自由英作文のような形式になってきています。10年前と同じ指導だけでは、入試に通用する力が養えなくなってきたと感じています」
 いずれの授業でも、生徒には、ただ席に座って板書をノートに書き写したり、教師に合わせて音読したりするということは一切ない。教師が話す時間をできるだけ少なくし、生徒自身が活動する時間を多く取り入れる。「今の入試に対応するには、英語を何度も読んだり書いたりして、英語を英語のまま理解できる力を身につけさせる必要があります」と伊藤先生は強調する。
 リーディングの授業は、のような手順で進められる。
図
 まず、教科書欄外の単語を生徒全員で4~8回音読する()。次に、授業前に配付したワークシートに示された日本語について、該当する英単語を長文の中から探す「ワードハント」()を経て、冒頭で紹介したコーラス・リーディング()を行う。
 D~Fは予習内容の確認だ。伊藤先生の授業では、毎回、授業の最後に次回の授業で扱う長文と課題を示した予習用プリントを配付する。内容は、主に問題の作成、指示語が示す内容についての理解、当該単元の最重要構文の和訳などだ。自作問題は、2題は必ず疑問詞を使った設問とし、「Yes・No」で解答できる設問は1題のみとしている。指示語について考えさせるのは、全体の要旨を素早く読み取らせるためだ。
 長文の内容によっては、速読力を鍛えるためにパラグラフ・リーディングを行う。パラグラフごとに内容を象徴するトピックセンテンスを解答させ、素早く長文全体の文意を把握する力を身につけさせるのだ。
 「生徒には、年度の最初に『英文の全訳は書いてはいけない』と伝えています。全訳を書かないと英文は理解できない、という考え方に陥らせないためです。私の授業でも、和訳をするのはEの部分だけ。大切なことは、英文を素早く読んで、英文そのものを理解することなのです」

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