特集 変わる地方国立大
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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サプライサイドの発想を捨て地域のニーズに応える

 地方国立大の意識が変わりつつある中、その改革はどのような方向に進んでいくのでしょうか。
 その動向を見極める上で手がかりになるのは、98年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」です。この中で、大学審議会は今後目指すべき国立大の大学像として、「最先端の研究を志向する大学」「総合的な教養教育の提供を重視する大学」「地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学」といったいくつかの大学像を示しました。これからの国立大は「教育」「研究」「地域貢献」のいずれかに特化し、それぞれの個性を発揮することを求められたのです。
 これまで国立大の多くは、サプライサイド(供給側)の発想で大学運営を進めてきました。例えば、教員養成課程のゼロ免課程などは、まさにこの発想です。地域の要望に応えているかどうかということは二の次で、教員のポストを確保するために、総合、情報、地域といった名称の学部・学科をつくるということが起きました。大学としての知名度も高く授業料も安いために学生は集まりますが、それがニーズだと勘違いしている大学も少なくなかったのです。
 これからは、大学が自身の役割を見つめ直し、「地域の人材育成の拠点」として必要と思われる分野に特化していくことが大切になるでしょう。例えば、鳥取砂丘に適した農業を考えていくとき、都市部の基幹大学が研究するよりも地元の鳥取大が取り組んだ方が、地域の問題として真剣に捉えられるからです。地域の産業や自然などを広く見渡し、地元に密着した研究分野に特化してこそ、地方国立大の存在感が増すといえるのです(図4)。
 高校生が志望校を選ぶ際に着目してほしいのは、その大学がいかに地域のニーズをつかみ取り、大学の特色づくりに力を入れているか、どれだけ学生の立場に立って教育の充実を図っているかということです。また、教師は生徒に何を勉強したいのかという動機をしっかり持たせてほしいと思います。大学案内や大学のウェブサイトで学長や学部長の方針を読んだり、直接大学に足を運んだりして、教育をしっかり考えている大学・学部かどうかを見極めてください。それが、生徒のより良い大学選択につながると同時に、大学の活性化をもたらすのです。

図4:21世紀COEプログラムとグローバルCOEプログラムの採択件数

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