物性物理学は、物質の性質を解明する学問です。例えば、なぜダイヤモンドは硬いのか。ダイヤモンドも鉛筆も同じ炭素原子で構成されていますが、原子の並び方や結び付き方によって色も硬さも全く異なります。また、超伝導(※2)のように、ある物質を超低温にすると電気抵抗がゼロになる物質もあります。なぜ同じ物質なのに、ある条件の下でその性質が変わるのか。そうした物質の仕組みや原理を追究することが物性物理学の役割です。
私は、物性物理学の中でも、特に二次元電子系を中心的な研究対象にしています。通常、電子は三次元の空間上を運動しますが、ある一定の条件を与えて平面上だけで運動させると、通常とは異なる不思議な性質を示すようになります。例えば、私が大学院生時代に研究していたMOSトランジスタ(※3)というものがあります。半導体の上に絶縁体をはさんで金属を付けてプラスの電荷をかけると、電子はマイナスなので引き寄せられ、半導体の表面だけを動くようになります。ここに強い磁場を与えると、通常「連続的」に変化していくエネルギーが、「不連続」に増加するようになるのです。
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