98年には電気抵抗が全くない完全導体となることも解明しました。金属には必ず不純物が含まれているため、電子を散乱させる要因が必ずあります。ある方向に電子を通そうとしても、どうしても引き戻される、つまり電気抵抗が生じるわけです。しかし、カーボンナノチューブでは、単に薄いグラファイトの層を丸めただけで電気抵抗がなくなり、超伝導と同じ電気伝導が得られるのです。
カーボンナノチューブに関しては、世界中の研究者によってかなりの部分が解明されており、今後は実用段階に入るといわれています。ナノ材料や環境、バイオ・医療などへの応用が見込まれていますが、あまりにも微細な物質のため、現在もその構造制御などが完全にできていません。
現在、私はカーボンナノチューブに続いて、グラフェン(※6)と呼ばれる物質を研究対象にしています。グラフェンは、カーボンナノチューブをシート状にしたグラファイトの薄い層です。カーボンナノチューブよりも制御しやすく、高性能で低消費電力の超小型装置を製造することも期待できます。
このように、何かが解明されても、すぐにまた新しい現象や物質が発見されるところが物理学の魅力です。それらを解明していくことで、科学は一歩一歩前進していきます。これからも不思議な現象、新物質は次々と発見され続けるでしょう。皆さんも、この興味尽きない物理学の世界に足を踏み入れられてはいかがでしょうか。
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